自民党の新総裁に高市氏が選出されて、最初の演説では「働いて、働いて・・・働いて参ります」と何度も「働いて」を繰り返した言葉が強く印象に残った。
「働いて、働いて」という言葉からは肉体労働を、ツルハシやモッコや汗水垂らす姿を想像してしまうが、勿論総理総裁がそんな事をする筈がない。デスク・ワークをする人でも松本清張などはその膨大な著作量から推察するに「働いて、働いて」という人生だったのではないだろうか。宮沢賢治などは肉体労働もデスク・ワークも両方こなす「働いて、働いて」だったような気がする。
大河ドラマ「べらぼう」に出て来る将軍徳川家斉は子作りが主な仕事だったそうで、大奥の女性を相手に「働いて、働いて」55人の子を成し、全国の大名家に養子に出したり、嫁入りさせたりして支配を広げたそうだが、これは肉体労働の一種と言えるかどうか。
総じて権力者ともなれば、自ら動かなくても部下に指示を出して業務を処理する事が多い(子作りだけはそういう訳にいかないが)から、なかなか「働いて、働いて」というイメージが湧きにくい。その中で例外は中国の清朝第五代皇帝の雍正帝ではなかろうか。彼の死因は何と、働き過ぎによる過労死だとか。詳しくは宮崎市定著「雍正帝」を参照頂きたいが、国内各所から寄せられる上奏文の全てにいちいち目を通し、自らの考えを朱書きして送り返して、一日の睡眠時間は4時間に満たなかったという。石破前首相は「総理大臣になってもそんなに楽しい事はない」と言ったが、当時世界最強の権力者だった清の皇帝でも楽しい事はなかったかも知れない。父の遺詔を書き換えてまで就いた帝位なのに。
初の女性総理誕生に若干の暗雲が立ち込めたが、高市氏の「働いて、働いて」がどんな姿になるか注目したい。
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