2026年10月6日火曜日

切り抜き

 10月2日まで東京は37日連続降雨の記録を作った。お陰でテニスの練習も中止が相次ぎ、徒然なるままに部屋の片付けでもしようかと、昔新聞や雑誌を切り抜いてそのままになっていたファイルをひっくり返している。

その中に「トランプの『執行猶予』生活切りつめを条件に銀行は追加融資」という記事が目に入った。1990年7月のNewsWeekの切り抜きだ。トランプとは勿論今のトランプ大統領である。銀行からの借金の返済が滞り、その事業の再建計画をトランプとその弁護団が銀行団と交渉した時の様子を伝えている。銀行は追加融資と利払いの一部繰り延べを認めたが、その条件が「生活を切り詰める」事だった。どれだけ切り詰めるかと言うと、月の生活費を45万ドルまでにしろ、という事らしい。45万ドル、当時のカッコ書きで約6750万円とある。一ヶ月の生活費だ。

記事には前月の出費が58.3万ドルだったとあり、その内訳はフロリダやマンハッタンにある3つの豪華な住居の維持費、自家用ジェットやヨットの維持費、使用人やボディーガードの給与などだとある。

そんな彼だが交渉の途中、腹ごしらえをしようとなった時「俺はマクドナルドにする」と言ってビッグマックなどを注文したそうだ。しかも同席者によればメニューもちゃんと覚えていて常連だった事を伺わせたとか。

肥満化した生活を維持するために多額のお金を必要とし、食生活はハンバーガーをぱくつくような生活は幸せなのだろうか。そんな事を思いながらある新聞記事に赤いサインペンで傍線を引いた箇所が眼に止まった。平成16年の宮中歌会始の様子を伝える記事だった。その年のお題は「幸」、一般から選ばれたその歌に胸が熱くなった。

 夢に来ていま幸せかと問ひ給ふ

 母の若さの眩しかりけり

2026年9月29日火曜日

自衛隊

 前回は自衛隊員の採用がままならない事を話題にした。実態は我々の想像以上にひどい状況にあるように思える。2024年度の自衛官の数は定員(24.7万人)の90%弱の22万人、これは冷戦終結後で最小の人数だそうだ。しかし、もっと憂慮すべきなのはその内訳で、これを知った時はびっくりした。

自衛官の内訳は①最前線で活動する「士」②部隊の中核となる「曹」③曹士を指揮する「幹部」に分かれるが、この中で「士」は定員(5.3万人)の6割しかいない、つまり約3万人程度しかしないらしいのだ(2025年10月19日付けの読売新聞)。20万人を超える軍隊、と言っても最前線で戦うのはたったの3万人、これで大丈夫なのだろうか。隊員の待遇改善や募集年齢の引き上げなどが行われているらしいが、自衛隊内部からは「幹部ばかりが増え、階級インフレが進むだけだ」との冷ややかな声が聞こえるとか。

国家予算の中での軍事費の増強が進むが、武器や装備品をいくら揃えてもそれを実際に使う人がいなくてはどうしようもないではないか。日清戦争の時、清国は定遠や鎮遠などの軍艦を揃え、恐らく軍備では日本を上回っていたと思うが、それを使う兵士の質の差で日本に軍配が上がった。軍事費をヨーロッパ並みにという掛け声でGDPの3%まで軍事費を上げる予定だそうだが、豊富な軍備と足りない兵員でどう戦うのか、そのシミュレーションは出来ているのだろうか。日本がかつての清国の二の舞にならぬよう祈るばかりだ。

先日は1機200億円もする偵察用のグローバルホークが鳥取県沖で墜落した。その運用・維持費はアメリカに支払う技術支援費の1000億円を含め、20年で3500億円以上にも上るとか。税金の使い道として本当にこれで良いのか疑問が絶えない。

2026年9月22日火曜日

ターミネーター

 自衛隊の求人がままならず、採用計画の半分程度しか埋まらないそうだ。そこで笹川平和財団が自衛隊に外国人を採用したらどうかという提案をしたという記事が9月8日付けの東京新聞に出た。

兵隊さんに一番求められるものは戦闘意欲であり、だから自国で生まれ育った人でさえ長い時間をかけて愛国教育を叩きこまなければいけないというのに、外国人に戦闘意欲を期待できるものなのだろうか。下手に叱咤すればすぐにも銃口が逆方向に向いてしまうのではと心配になる。

しかし一朝有事の際に兵隊さんが必要なのは間違いない訳で、どうしても、となったら人型ロボットの採用に踏み切るのではないか。ウクライナでもイランでも戦争の主役を担うのはドローンである。こんな事を言ったら、知覧などの飛行場から飛び立って散って行った若者達に失礼だが、ドローンはその形態からすれば無人のロボット型特攻機ではないか。遠隔地を攻撃するには飛行機でなければならないが、接近戦を戦うとなると、やはり人型ロボットになりそうな気がする。

中国で開発されている人型ロボットの進化は目を見張るものがある。先日は人型ロボットの運動会が行われた。つい二三十年前までは二足歩行をするのがやっとであったロボットが、今や速く走るのも高く跳ぶのも人間を遥かに凌駕する。ロボット同士によるボクシングも行われた。ロボット相手にボクシングをしようと思う人間はいないと同じように、敵国軍隊にロボットがいたら、殆どの兵隊は戦意喪失するだろう。

そうやってターミネーターの世界が現実化される。あの映画を見たのは何年前だったろうか。こんな事ある訳ない、が第一印象だったが、下手をすると自分自身がその目撃者になりかねないのが怖い。あの映画も2029年の設定だった。

2026年9月15日火曜日

広報

 ドナルド・トランプという人はあまり遵法精神がないようだ。映画「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」でも描かれていたが、ロイ・コーンという剛腕弁護士に「絶対に負けを認めるな」と教えられ、それが彼の人格形成に大きく影響しているらしい。11月に控える中間選挙では共和党が勝利したら国民に5000ドル(約77万円)を配ると言い出した。票を金で買うなんて、どう考えてもいかんと自制が働きそうなものだが、彼の頭の中は常識と違う。

トランプを崇拝する高市総理の発想も似ている。9月11日付けの東京新聞によると、2027年度予算の概算要求で内閣広報室の経費が前年度(約7億円)の10倍超になる約72億円の要求をしたという。宣伝広告というと私企業が行うものであって、政府が多額の予算を使って宣伝広告をするというイメージがつかないが一体何をやろうというのか。

そもそも誰に向かって、何を宣伝しようと言うのだろう。私企業が宣伝広告を行うのは同業他社との競争に勝つためで、自社の製品がより優れている事を消費者に知ってもらうためだ。競争に勝つという点から言えば、自民党が宣伝広告を行うのであれば分かる。他の政党より優れた政策を立案・実行しようとしていると選挙民に訴える訳だから。しかし、政府には競争相手はいないはずだ。他国の政府より日本の政府が優れているから、皆さん日本国民になりましょう、と移民を推奨しようとでも言うのかと冗談の一つも言いたくなる。

政府がやっている仕事を国民に理解して貰おうというのなら、高市総理が避けていると言われる記者会見をもっと開いたり、国会での質問や批判に応えたりする事の方が肝要ではないか。まさか税金を自党に有利に私的利用するつもりではあるまいな。

2026年9月8日火曜日

法律

 アメリカとイランの戦争に出口が見えない。戦争は始めるのは簡単だが、終わるのは難しいと言われる。第二次大戦は日本とドイツが壊滅的な打撃を受けてようやく終わった。第一次大戦はドイツ国内で兵士や労働者の反乱が起き、皇帝が退位して終わった。アメリカとイランの戦争も、アメリカの中間選挙の結果が出て終わるのだろうか。

思い出すのはこの戦争が始まった時の高市総理の発言だ。「アメリカの挙動に対する法的評価は国益を考慮しながら行う」というものだ。当時の国際世論はアメリカの攻撃は国際法違反ではないかというのが主流だった。私は高市総理の発言を聞いて大変驚いた。法的評価とは本来損得を超越したものだと思うからだ。国益を考慮しながら法的評価を行うというのは、自分にとって得な事なら無法な事でも目をつむる、と言っているように聞こえる。高市氏は神戸大学の経営学部経営学科のご卒業だから法律にはあまり関心がないのかも知れない。

その流れなのだろうか、ICC(国際刑事裁判所)に対するアメリカの制裁にもあまり関心がないようだが、それよりICCとアメリカのいざこざに関してはルビオ国務長官の態度に首を傾げる。ICCに対するアメリカの主張は「非加盟国の国民を裁く権限はない」というものだ。イスラエルのネタニヤフ首相を犯罪者とする事に我慢がならない故の主張だが、これに対してICCは「加盟国の国内(領域内)で起きた事件に関しては非加盟国の国民も捜査対象」と反論する。パレスチナ自治政府はICCに加盟しているから、そこの無辜の市民を殺害するのは犯罪だと言っている。

マイアミ大学で法務博士の学位を取ったルビオ氏なら刑法が一般に属人主義でなく属地主義である事は先刻承知のはず。それをちゃんとトランプさんに教えて欲しいものだ。

2026年9月1日火曜日

誤審と不正

 あるテレビ番組で桑田真澄さんが「たとえ誤審であっても審判の判定を受け入れるのが高校野球なので、ビデオ判定の導入には反対です」と言っていた。こういう発想に私はちょっと馴染めないが強いて例えると、地震や大雨などの災害で苦しむ人達がいて、その理不尽さに神も仏もいないのかと思うような事があるが、それも受け入れざるを得ない、というような感覚なのだろうか。

スポーツの判定を巡っては、野球だけでなくバレーボールでも不思議に思う事があって、ブロックに飛んだ選手の手にワンタッチがあったかどうか、これも当人なら絶対分かる筈なのに決して自己申告はしない。テニスでラケットをボールがかすめた場合など、誰でも「あ、今触っちゃった」と、たとえ自分に不利な場合でも必ず自己申告するのに。

スポーツ競技における不正と言えば、サッカーでも相手選手のユニフォームを引っ張るなど当たり前にやっている。これも厳格に言えばルール違反なのだろうが、審判にばれない限りやらないのは熱意が足りない、とでも思われているかのようだ。日常生活に例えれば、自動車運転時の軽微なスピード違反に相当するか。強く引っ張り過ぎて相手選手が倒れてしまったりすると、流石にファウルを取られる。スピード違反も30キロ以上になると見逃して貰えないのに似ている。

テニスで不正と紛らわしいものと思われるのはフェイント攻撃で、右に打つと見せかけて左に打つ、強打すると見せかけて弱い球をネット際に落とす、などがある。相手を騙す訳だから日常生活に例えると詐欺まがいに思えるがこれは立派な戦術で、これが上手な選手は名選手と呼ばれる。ワーテルローの戦いでロスチャイルドが大儲けした巨大なフェイントは許容範囲と不正の境界線にあるように見える。

2026年8月25日火曜日

フェアプレイ

 高校野球と言えばフェアプレイ、フェアプレイと言えば高校野球、そう言われて当然だと一般に信じられているし、関係者もそう自認している筈だ。しかし、実際はそうでもないらしい。先の夏の甲子園のある試合で、私は目を疑い、首を傾げた。

二塁にランナーがいる状況で、キャッチャーが絶好の牽制球を投げ、二塁手がタッチしたかに見えた。しかし判定はセーフ。二塁手はすぐさまベンチにビデオ判定をアピールし、監督がそれに応えた。ビデオを見ると明らかにタッチしている。審判の目からは死角に入っていたのだろうが、当の選手、ランナーは自分がタッチされた事ははっきり分かった筈だ。それ程明確な、グラブが折れ曲がる程の接触だった。

こんな場合、自分に有利な誤審を自分から訂正するというテニスでは当たり前の習慣が野球にはないらしい。もし、あの時二塁ランナーが自発的にアウトを認め、ビデオ判定するまでもありませんよと自己申告したら、チームメイトからは裏切り者扱いされたのだろうか。

ビデオ判定は当事者が判断できない場合(例えば内野ゴロで一塁に走り込んだ時、ベースを踏むのが早いか、ボールがミットに入るのが早いかなど)に意味があるのであって、当事者が真相を知っている場合はたとえ自分に不利であっても自己申告するのがフェアプレイだと思うのだが。実際テニスでは億単位の賞金が掛かっている試合でもそれが行われている。

ある人に聞いたら、高校野球ではタッチをしていない場合でも大声で「タッチ」と叫び、あたかもタッチしたかのような印象を醸し出すよう指導をしているらしい。地方大会ではビデオ判定の導入も少ないらしいからそんな時有効なのだろう。テニス愛好家の私からはちょっと信じられないような話だった。