2017年2月28日火曜日

57歳

皇太子殿下が57歳になられた。57歳と言えば私はもう会社を辞めていた年齢だ。残り何年の人生があるか分からないが、自分のやりたい事に時間を割きたいと思って会社を辞めたのだった。その頃の心境は当コラムでも26回「会社と社会」、27回「上司と市場」、28回「アンパンマンとサラリーマン」などに書いた。だがその年齢で皇太子殿下はこれからいよいよ本格的なお仕事をなさるというわけだ。天皇陛下に対しては「(退位後は)ご自分のためにお使いになる時間をもう少しお取りになれるとよい」との事だが、御自分自身についてはどのようにお考えなのだろうか。皇室という立場だとやりたい事と言ってもやれる事は限られるのだろう。ハチャメチャな事は出来るはずもないし。
ハチャメチャをやった天皇という事では25代武烈天皇と72代白河天皇を思いつく。武烈天皇の方は次の継体天皇の正統性を際立たせるための虚構の可能性が強い(そうとでも思わなければ納得できないほどひどい事が日本書紀には書いてある)が、白河天皇は賀茂川の水や賽の目すらも自分の思う通りにしたかったみたいだから、やりたいことは何でもやった人なのだろう。中でも孫の嫁に手を出して子を作るなどはなかなか出来ることではない。その崇徳天皇が生まれた時、白河天皇は六五、六歳、相手の待賢門院は一七、八歳。(生まれた年から満年齢を推算した。)
我々庶民はというと、プレミアムフライデーで早めの退社をして何をしたいのか問われて、一番多かったのが「自宅でゴロゴロしたい」だったそうだ。不敬な想像かも知れないが、皇室の皆様もひょっとしたら各お住まいで家族水入らずで誰の監視もなく無目的な時間を過ごしたい、そんなお気持ちではないのだろうか。

2017年2月21日火曜日

三文字英語

STAP細胞で世間を騒がせた小保方さんに関するNHKの報道が行き過ぎであったとの判断が下された。その判断をした団体の名はBPO。放送に関する事柄だから最初のBが「ブロードキャスト」であろうとの推測は出来るが、あとのPが分からない。記事を読むと正式名称は「放送倫理・番組向上機構」だそうだ。Pは番組を意味する「プログラム」らしい。
アルファベット三文字の言葉、良く見るが栄枯盛衰も激しい。最近トランプ政権が大幅減税と大規模公共事業を両立させるため民間の投資会社を設立してその資金で公共投資をしようという話があって、それに日本の外為特会や年金資金を使うような噂が出た。その是非はおいといて、民間の力を公共投資に利用する事をかつてPFIと言っていた事があったが、それは死語になったらしく今回はその言葉が聞かれなかった。
トランプラリーで米国の株式市場は連日最高値を更新しているが、相場を牽引するIT産業、かつてはIBMという巨人がいたが、最近それもめっきり顔を出さない。もう三十年も前になるがIBMを倒すのはDECであろうと言われた。メインフレームが中心だったコンピュータがワークステーションに主軸が移ると思われた頃だ。実際はSUNがワークステーションの主流になり、いまやDECSUNも身売りしてその影はない。
IT業界ではかつて経営革新を促進するとしてERPというソフトがもてはやされた。その主流がドイツの会社SAPだった。その会社は「サップ」と読まれる事を嫌い、理由を聞くと「だってIBMを『イブム』とは言わないでしょう」との事だった。
さて件のBPOだがWHOWTOなどの国際機関でもないらしいから日本の団体らしく「放倫審」とでも呼んだ方がいい。分かり易いし、その方が長続きしそうだ。

2017年2月14日火曜日

ドル円相場

トランプ大統領のつぶやきや、財務長官の発言などで外国為替相場が大きく揺れ動く。先週末もドル相場は1ドル=113円を越すドル高に振れ、日経平均は円安を好感したか500円近く値を上げた。1日で0.5%以上為替が変動した日の数は就任前の2倍になったそうだ。新大統領が何をやるのか分からない不安が過敏な変動を生んでいるようだ。
ところで1ドル=何円、という時これを「円相場」と呼ぶのは如何なものか。さらにおかしいのはグラフを書くとき縦軸の数値の大小を逆に目盛ったり、1ドル=111円が1ドル=113円になった時、前日比を「-2円」と表記する事だ。円が安くなった事をもって「マイナス」を付けているのだろうが、111から113への変化はどう考えても「プラス」だろう。
1ドル=何円、というのはドルの値段を言っているのだから「ドル相場」というのが正しい。どうしても「円相場」と言いたいのなら1円がどの程度の価値を持っているかを表現しなければならない。価値の基準として世界の基軸通貨であるドルで測るのはまあよしとしよう。
その方法で表記しなおすと、1ドル=100円から1ドル=120円への変化は(1円の価値は小さく表記が煩わしいから100円単位で表記する)100円=1ドルから100円=0.833ドルへの変化と表現できる。もし1ドル=80円になったら100円=1.25ドルだ。こちらの表記であれば素直に円が安くなった、高くなったを実感できる。

そもそもリンゴの相場を言うときリンゴ1個が何円するかで表現するのが当たり前で、100円で1個買えたリンゴが100円で1.2個買えるようになったからリンゴが安くなったんだ、などと言うのはおかしいではないか。円相場だけはそんな変な表現をしているのは何故だろう。

2017年2月7日火曜日

誠意と敬意

人と接するに当たってとても大切だと思っている事がある。それは誠意と敬意を忘れてはいけないという事だ。敬意の方は相手の資質にもよるから「出来れば」という条件が着くが、誠意は100%自分の問題であり、たとえ相手がどんな極悪非道な人間であっても誠意を持って接することは可能なはずだ。
一般社会で大切なこの原則、ましてや礼を重んじる外交において絶対条件だと思うのだが、その人には全くそうした気遣いがないようだ。メキシコの大統領との会見を壁の建設費を巡る意見の対立からキャンセルしたり、オーストラリアの首相との電話会談を途中で打ち切ったり。そこには敵意と慢心しか見えない。
アメリカを愛しているからアメリカの利益を害する者に対しては毅然とした態度で接するのだ、という言い分なのだろうが、こうした誠意と敬意を忘れた対応はかえってアメリカの利益にはならないように思う。少なくとも国家としての品位を著しく落としている事は事実ではないか。こんな事をしているとかつては全ての国から敬意をもって迎えられたアメリカが次第に敬意を失くしてしまうかも知れない。
相手が敬意に値しない人でも誠意だけは忘れまいと努めているように見えるのがアメリカの相手国だ。だが、誠意と阿諛、迎合、追従を間違えてはいけない。毅然とした態度というのは強い国が弱い国に対して見せるものでなく、むしろ弱い国が取るべき態度なのだから。

「アメリカ・ファースト」という言葉はアメリカへ愛国心の表れだ。仏教では「愛」は執着の原因となるとして否定的に扱うのだそうだ。私個人的には「愛」は至上の価値のように思えるがアメリカの傍若無人な大統領を見ていると、仏教の教えに従って「愛」を見直さないといけないような気になってくる。