2020年8月11日火曜日

熱帯夜

 

長い梅雨が明けたと思ったらすぐに猛暑がやって来た。相変わらず外に出る気にもなれず、出来ればクーラーの助けを借りたくないとつまらぬ意地を張っている私も白旗を上げる毎日だ。特に夜の寝苦しさには参る。クーラーのない野生の動物はどうしているのだろうか。

少なくとも五十年前は眠るのにクーラーの助けは要らなかった。大学の講義の最中に先生が「ロケットを一発だけでいいからやめてくれたら全部の教室に冷房が入るのに」と愚痴をこぼしていたのを思い出す。しょっちゅう打ち上げに失敗していたロケットへの揶揄も感じた。小学生の頃はと言えば扇風機すらなかった。六畳の部屋に蚊帳を吊って家族四人で寝ていたが、それでも暑くて眠れなかった記憶はない。逆に冬に足が冷えて眠れなかったという記憶はあるのに。

夏の暑さは五十年前より明らかに身に堪える。息子は私以上にクーラーを点けたがるから、加齢の所為でもなさそうだ。地球温暖化の議論はホッケースティック曲線に代表されるように、データの取り方に作為を感じてすぐに同調する気にはなれないが、暑さがきつくなっているのは認めざるを得ない。

思えば五十年前はたまに自動車に乗せてもらってもでこぼこ道が沢山あってお尻が痛くて大変だった。あれから人間たちは街中の地面と言う地面をアスファルトとコンクリートで塗り固め、樹木を伐採し、その上まわりの家が一斉に外に向けて暖房のスイッチを入れるのだから熱帯夜の日数が増えるのも無理はない。地球全体の温暖化というより、街中の局所的問題と考えた方が良さそうだ。野生の猿や猪や鹿たちはおそらく山の中の自然に囲まれたねぐらで、地面からの水蒸気や樹木の呼気などの打水効果でクーラーの助けなど借りなくても安眠しているのだろう。

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