2021年4月13日火曜日

原題

 先日息子の勧めで「ドリーム」というアメリカ映画を観た。「ドリーム」というのだから当然「Dream」が原題だろうと思っていたが、実は「Hidden Figures」、「隠された計算」とでも言おうか。計算能力に優れた黒人女性がNASAで白人から嫌がらせを受けながら活躍するが、その成果の報告書や論文は上司の白人男性の名前でしか発表されない。仲間の黒人女性と一緒に人種差別にめげず夢を実現する姿からこの題名となったのだろう。

「風と共に去りぬ」のように原題を直訳したものもあるが、海外の作品を日本に紹介する際のネーミングに苦労や工夫の跡を見るのは楽しい。一番の傑作は「ハート・オブ・ウーマン」ではないだろうか。原題をカタカナにしただけに思えるが、原題は「What woman wants」。メル・ギブソン演じる主人公がある日突然周りの女性の心の中が透視できるようになるというコメディだ。原題はwで頭韻を踏んでいるが、「女性が望むもの」より「ハート・オブ・ウーマン」の日本語(?)の題の方が全体としてお洒落だと思う。

もう一つの傑作はジャック・レモン主演の「晩秋」。この映画の原題は「Dad」だ。「おやじ」では味もそっけもなく深みに欠ける。アメリカには「見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮」といった風情はないだろうから仕方ないか。

中には「夕陽のガンマン」や「続・夕陽のガンマン」などのガッカリもある。前者の原題は「For a Few Dollars More」(もう数ドルのために)、後者は「The Good, the Bad and the Ugly」(善玉、悪玉、卑劣漢)でいかにも西洋人の強欲さがよく出ている。日本語のタイトルは内容にそぐわない。しかも「続」と言っておきながら全く関連がないのだからひどい。題名がこうだと内容までお粗末に見えて来る。

0 件のコメント:

コメントを投稿