2022年7月12日火曜日

民主主義の危機:トライアングル第774回

安倍元首相が凶弾に倒れた。たまたま小杉隆著「世襲議員のからくり」という本を読んでいたのは何かの縁か。安倍氏に対する批判も書かれているが、今それには言及しない。ご冥福をお祈りすると共に、周りにいた人達に累が及ばなかった事をせめてもの救いとしたい。

政治家の暗殺事件と言えば、浅沼稲次郎氏が日比谷公会堂で刺殺された事件を思い出す。ラジオから流れる緊迫した声に大変な事が起きたのだと子供心に思ったものだ。あの時とは違い、万人がカメラマンになって様々な視聴者投稿画像が寄せられるが、しかし決定的瞬間が報じられないのは何故か。浅沼事件では犯人が刃物を脇腹に突き刺すまさにその瞬間が写真で報じられたのに。

今回、犯人が安倍氏の背後から銃を撃つ様子を捉えた動画が流れた。一発目の音に驚いた安倍氏が後ろを振り返り、犯人が再度狙いを定め二発目を撃つ、その瞬間で動画は止まってしまった。別の動画でも銃撃が致命傷を与える瞬間は巧妙にカットされていた。安倍氏が仰向けに横たわる写真も出たが、あちこちボカシだらけだ。まるで「ここまでは下々にも知らせて良い情報。これ以上はダメ」という検閲が入っているかのようだ。警察の会見でも「詳細は差し控えます」が当然のように頻発する。その情報を公にする事で支障が出るとも思えないような事柄でも。当然それらの情報にフルアクセスできる層がいる。

「由らしむべし、知らしむべからず」は民主主義の敵だ。情報の透明性こそ民主主義を支える一番の柱のはず。前述の「世襲議員のからくり」にはテレビ局に子女を入社させている政治家の名前が多数列記され、政界と報道の癒着が懸念されている。その癒着が情報の囲い込みを産んでいるとしたら、それこそ最大の民主主義の危機ではないか。

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