日本の大河ドラマも面白いが、中国にも似たようなものがあるようだ。日本以上に長くて多彩な歴史を持つのだから題材も山ほどあるに違いない。某有料チャネルでは「太秦賦」と題する連続ドラマが毎週放映され先日の最終話第78話で幕を閉じた。秦の始皇帝が天下統一をする話で、彼が趙で人質として過ごした幼少時代から始まって、斉を滅ぼして統一を完成するまでの内容だった。後に秦を破滅に追い込む趙高も既に出ていて、彼がどのように発言権を高めていったのか注目していたが、その前に終わってしまったのは残念だった。
中国の歴史に関しては陳舜臣の本などである程度予備知識があるが、自分の知っている事と違う視点で描かれているとまた新鮮な気持ちになる。例えば韓非が殺されるのは李斯がその才を妬んで始皇帝に陰口を言ったからだと思っていたが、ドラマでの李斯はそんなケチな男ではなかった。自分の国である韓を滅ぼされたくない韓非がスパイまがいの事をやったため、始皇帝はその才を惜しみながら泣く泣く処分した、という描き方だった。民の幸せのためには天下を統一して戦のない世を作る必要があり、韓がどうの趙がどうの魏がどうのなどと言うなという訳だ。
従来なら民を万里の長城の建設に駆り出したり焚書坑儒をやったり残忍な暴君としての側面だけ強調される始皇帝だが、このドラマでは威風堂々とした風格、高邁な志を持ち、凛々しく英明で民を思う名君として描かれる。朝議では臣下に自由に意見を述べさせ、最終決定は英邁な君主が自分の責任で独断する。それが中国式民主主義だとでも言わんばかりだった。民主主義とは意思決定の過程が大事なのではなく、政策が民の為になっているかどうかこそが問題だ、という中国政府の立場を代弁しているのだろう。
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