2023年11月21日火曜日

将棋鑑賞

 月刊誌「将棋世界」の12月号は藤井八冠誕生を特集し、ベテラン棋士のコメント等が掲載されたが、その中で谷川十七世名人のコメントが1017日の当コラムで書いた事とそっくりで大変嬉しかった。以下に引用するので対照してみて欲しい。

「最後の逆転には驚きました。第3局も逆転でしたが、あの将棋は永瀬王座が正解手を指しても、まだ難しいところがあった。でも、第4局に関してはもう難しいところがなかった。ちょっと信じられない逆転です。それは、それまでの難しい局面の中、永瀬さんがずっと受け続けていた技術的なプレッシャーのせいだと思います。勝ちになってから藤井さんがずっと下を向いていたのが印象的でした。藤井さんにとっては、不本意な勝ち方だったのだと思う。それが、局後の「まだまだ実力が足りない」というコメントにつながったのだと思います。」

王座戦第3局も第4局も大逆転だったが、その意味合いはだいぶ違う事、第4局の最後藤井がずっと申し訳なさそうな様子だった事、永世名人が私と同じ所を見ていたなんて、とても誇らしく思った。

私自身、残念ながら棋力の方は左程自慢するほどではないのだが、将棋を鑑賞、評価する能力については少し自信がついた。「趣味は将棋です」と言えば多くの場合将棋を指す事であって、棋力は如何ほどかと聞き返される事が多い。しかし「音楽が趣味です」と言った場合実技より鑑賞に重点があり、「楽器は何をやりますか」という質問より「どんなジャンルが好きですか」とか「作曲家は誰が好きですか」という質問の方が自然の様に思う。

将棋を指すのは楽器を演奏するように難しいが、名曲を楽しむ様に、名局を楽しむ事は比較的簡単だ。将棋鑑賞が趣味としてもっと定着すればプロ棋士にも励みになるだろう。



0 件のコメント:

コメントを投稿