レンタルショップでDVDを借りてきて「軍師官兵衛」を一気見している所である。大河ドラマと言えばNHKが最も力を入れて製作している番組の一つだろうからよもや間違いはあるまいが、でもちょっと首を傾げたくなるシーンがある。
秀吉がキリシタンの危険性に気付いて禁制令を出す場面、「定」と書かれた命令書がこう映し出された。「日本ハ神國たる処きりしたん國より邪教を授候儀太以不可然候事」最後の方が漢文調になっているところなど如何にもそれらしく見えるが、この文章が書かれた天正15年には絶対に「きりしたん」などとは書かれなかったであろう。今我々が使っている平仮名は明治33年の「小学校令施行規則」で定められたもので、それまでは変体仮名が一般に使われていた。私が月に一回通っている「古文書講座」の文書でも、タの音を表現する文字は「多」を崩したものが殆どで、「太」を崩した「た」に出会う事は全くない。変体仮名に不慣れな視聴者が沢山いる事を考慮しての事と思われるが、ならば「切支丹」と漢字で書けば良かった。
この禁制令を民衆に知らせるための高札が出て来るシーンもあるが、これもおかしい。文字は行書で書かれていて読み取れないのだが、項目が四つになっているのだ。古文書講座で習った所によると、高札には奇数条項と言って項目は奇数にするのが一つのきまりだったそうだ。確かに17条の憲法も五か条の御誓文も奇数だし、家康の武家諸法度も13条、信長が足利義昭に出したのも17か条の意見書だ。時代考証を担当した人が奇数条項を無視したのはどういう理由だろう。
最後の極めつけは秀吉に従わない島津を討つため九州へ出征する官兵衛に対して妻の光(てる)が掛けた言葉、「道中ご無事で」。これから戦争に行こうという人にそれはないだろう。