2024年5月7日火曜日

伝統

 先週のコラムでは、男女平等と伝統を測りに掛けて前者が重要である事は論を待たないと言った。でも後で良く考えてみると本当にそれで良いのか不安になって来た。男女共学の問題に関してはそれで良いのだが、それを全ての問題に敷衍した場合にはどうか、と。

男女平等と伝統、この二つのキーワードから連想したのは皇位継承の問題だ。皇室典範の定める所では天皇になれるのは男系男子に限られる。女系に門を閉ざしている点で明らかに男女平等に反している。また、その根拠と言えば、ずっと昔からそうだったから、つまり伝統だからだろう。では伝統より男女平等の方が大事なら今すぐにでも女系天皇を認めるべきなのだろうか。

天皇は男系であって欲しいと願っている私は、自分のダブルスタンダードに悩んでしまった。ダブルスタンダードは最も恥ずべき破廉恥な態度だと思っている私は、当初の論を見直し、男女平等や伝統には色々あって、どちらが重要か一概には言えない、と思う事にした。

男女平等に良い悪いがあるとは思えないから、伝統の方に大事なものとそうでないものがあるのではないか。伝統とは長い年月人々がそれを是として守り続けて来たものだ。どれだけ多くの人に、どれだけ長くの時間に渡って守られたのかが伝統の価値を測る基準になると言って良い。男女別学は明治以降の事だからせいぜい百数十年の歴史で、現在男女共学の学校が殆どである事からそれを是とする人の数も多数とは言い難い。

一方で男系による皇位継承は千五百年程度続き、過去何度か女性天皇は生まれたが、男系だけは守られて来た。その伝統は天皇制そのものであると言っても過言ではなく、それを否定して女系を認めるのは天皇制の存在意義を否定するのと同じように思える。

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