2024年7月30日火曜日

弱きを挫く

 堀井学議員が公職選挙法違反で捜索を受けている。安倍派のパーティ券売上還元問題の捜査の中で堀井議員が違法に香典を渡していた事が発覚したのだとか。捜査の過程で入手した資料を徹底的に洗えば、安倍派幹部からだって埃は出たろうが、そちらは何故か表に出ない。

そして同じ公職選挙法違反で小池百合子氏が告発されているという事は新聞でもテレビでも全く報じられないが、これはどうしてだろう。小池氏が現職知事の立場を選挙活動に利用したとするもので、例えば都知事の定例会見の場で自身の選挙運動について語ったり、都知事の立場を利用して都内市区町村区長に出馬要請文書を書かせたりした事を問題にしている。

こうした事を最初に指摘したのは鳥取県知事も務めた片山善博氏で、実際に告発した二人の内の一人は松江市出身の弁護士郷原信郎氏だというからもっと話題になっても良いではないか。詳しく知りたい方は「小池百合子 公職選挙法違反」とか「郷原信郎 小池百合子」で検索してみて欲しい。検索して出て来るサイトを見ると、かつては小池氏の側近だった若狭勝氏も有罪の可能性が高いと言っている。それでもテレビや新聞で小池氏の公職選挙法違反について報じられたのを見た事がない。

そもそも既存メディアは小池氏が公務に便乗して選挙活動をする事が違法であるとの認識がなかったようだ。「公務優先を理由に該当活動は極力セーブ、各所現場視察を行い、同行するメディアを通じて実績をアピールした」なんて記事が堂々と載っている。「李下に冠を正さず」という言葉は死語になってしまったか。

だが、告発はなされた。司法がどう対応するか、メディアにはちゃんと報じて欲しいものだ。日本の司法もマスコミも強きを助け弱きを挫くのが好きなようで心配ではあるのだが。

2024年7月23日火曜日

年齢

 新聞の将棋欄に初老の男性のにこやかな笑顔の写真が載っていた。71歳で引退が決まった青野九段の局後の感想戦での笑顔だった。将棋界では一定以上の成績が上げられないと本人の意思に拘らず引退を余儀なくされる。青野九段も負ければ引退という一局で優勢を築きながら逆転され惜敗したのだった。負けはしたがその笑顔には自分の将棋人生への満足感が溢れていた。

アメリカでは飛行機のタラップを登る足取りもおぼつかない81歳の老人が「対立候補に勝てるのは俺だけだ。」と頑張っている。周りの人達は何とか引導を渡そうとしているようだが、今頃そんな事を言う位なら、どうしてもっと早く別の候補者が出なかったのか。現職の大統領が再選に手を挙げている時には党内から別の候補が出る事は控えるという暗黙の了解でもあるのかと思ったが、1980年には現職のカーター大統領に対してエドワード・ケネディ上院議員が予備選を戦ったりしている。

私の記憶では大統領選で年齢が問題になった最初の例は1984年のレーガン対モンデールの時だった。討論会で司会者が「年齢について・・・」と言おうとしたらすかさずレーガンは「いや、それは問題にならないと思う。相手がたとえ若くて経験が足りないとしても私はそれを問題にしようとは思わない」とかわしたのを鮮明に覚えている。その時レーガンは73歳、モンデールは56歳だった。

1991年に都知事選を争った鈴木氏も当時80歳だったが舞台で前屈して見せたりして健康をアピールした。しかし今度のバイデン氏はそんな元気はなさそうに見える。

引退が決まった青野九段は弟子から花束を贈られ「もう一局指せると思っていたけどな」と呟いたとか。「もう一期出来るかと思ったが」と言いながらバトンを渡したバイデン氏に笑顔は戻るのだろうか。

2024年7月9日火曜日

出版

 200773日にこのコラムを始めて17年と1週、今回が875回になる。その中から約130編を選んで一冊の本を出版して頂いた。題名はコラムと同じ「トライアングル」。書店に並ぶのも間近と思うが、ご興味ある方は当社までお問合せ願います。

当社社主の菊地氏より出版のお話を頂いて、早速800余編の中から選別作業を始めた。是非とも載せたいもの、これは載せたいと思うもの、余裕があれば載せたいものに分類しながら、過去に書いたものを読み進める。「ああ、こんな事があったなあ」と懐かしさがこみ上げてくるもの、「えっ、こんな事を考えた事もあったのか」と意外さを感じるもの、色んな思いをしながら約130編を選んだ。泣く泣く選に漏れたものもある。それらに再びチャンスを与える意味も込めて、出来ればこの連載が1000回を迎えた時点で改めて130余編を選び直して世に問う機会があればと願っているが、それは一に今回の売れ行きに係っている。皆様どうかご支援お願いします。

ところで、毎週一回コラムを書くという作業で私は随分と脳を鍛えられた。火曜日の掲載から逆算して月曜日中に校正、日曜に原稿送付のため土曜日中には粗方原稿を書き終えないといけない。木曜日になると、今度は何を書こうかと思い始め、その週に起きた出来事、読んだ本にあった面白話、等を思い浮かべて想を練る。時には金曜の夜になってもテーマが決まらず脳味噌に汗をかく程思い悩む事もあるが、それなりに納得のいく仕上がりになって、日曜に原稿を送った後、午後2時間のテニスを楽しんで、その後録画した将棋を見ながら飲むビールは格別だ。今後も頑張って皆様の元に原稿を送り届けたいと思っている次第です。

来週は火曜日が休刊日となるためお休みします。23日からまたお目に掛かります。




2024年7月2日火曜日

経歴

 都知事選への立候補者の一覧が氏名、年齢、職業、所属党派の形で新聞に示された。その人の人となりを表すのに一番適切な指標がそれらの項目なのだろう。それに加えて最終学歴を掲載した新聞もあった。出身地や性別を書いた例が全くないのは、それらが政治的能力を判断するには役に立たないから当然とも言える。

所属党派に関しては主要政党以外は党派名が記されず諸派とされている新聞と、全ての党派名を平等に明記している新聞があるが、私は公正さの観点から後者の立場を是としたい。そうしないと、今話題になっている多数の候補者を擁立した某N党の人も全て諸派では区別が出来ない。

職業に関してはどういう基準で書かれているのか大いに疑問。蓮舫氏は()行政刷新相となっている新聞もあれば、()参議院議員としている新聞もある。出来るだけ直近の職業を優先するなら後者の方が適切か。ひどい例として32歳の()人材会社社員なんて人がいた。定年退職して年金生活している人が()会社員なら仕方ないが、現役世代なら今の職業を書いて欲しい。同じ人の他の新聞を見ると「政治団体副党首」、「接客業」、「ホスト」とまちまちだ。各新聞が独自の調査をして各人の経歴に偽りがない事に関し裏付けを取った上で掲載している訳ではないのは小池氏の例を見ても明らかだから、おそらく各新聞からの問い合わせに対して本人が別々の回答をした結果なのだろう。

NHKの政見放送では各候補者の経歴は本人からの申し出をそのまま放送しますと断りがあった。小池氏は当然のようにカイロ大卒と明言した。石井妙子著「女帝小池百合子」や文藝春秋5月号、その他の状況からすると限りなく黒に近い経歴詐称に思えるが、果たして都民はそれを許すのだろうか。