先日某テレビ番組で和歌山毒入りカレー事件が話題に登った。過去の映像で印象に残ったものは何かという趣向で、ある出演者は当時有力な容疑者と目された林真須美氏が詰めかけた報道陣に向かって薄笑いを浮かべながら水を掛けるシーンを取り上げた。その過剰な報道の在り方を問題視したのだが、別の出演者は砒素の鑑定に関し、あの事件が冤罪ではないかとの指摘もした。最近の「マミー」という映画でも同じ事が話題になっている。
しかし驚いたのは誰もあの事件を医療過誤として認識していなかった事だ。
平成十年七月末の夏祭りで事件は起きた。当初食中毒とされた報道を見て一人の女子中学生が疑問を感じる。「えっ、カレーで食中毒ってあり?カレーって様々なスパイスを入れ熱帯地方で食中毒を起こさないように考えられた料理なのに」そこから彼女は様々な専門書をあたって考察を重ね、それを「四人はなぜ死んだのか」という本にした。食中毒の次は青酸カリが疑われ、真の原因である砒素にたどり着くまでに一週間以上の時を要した。その間、本来催吐して毒物を吐き出させるべき所を逆に鎮吐剤を投与したり、青酸カリの解毒には有効でも砒素には有害な薬剤を投与したり、そうした過誤が被害者を死に追いやった。謂わば警察・保健所・医療機関・マスコミの恥とも言うべき事件の経過が中三とは思えない筆致で克明に描かれている。
最初に読んだのはもう二十以上年も前になるので、確認のため出雲市立図書館から借りて改めて読み直してみた。本を開くと栞の紐は新刊書のように途中に丸まって収まっていた。奥付を見ると1999年7月20日初版、同年9月20日第8刷とある。二か月で8回も増刷した事以上に、出雲の図書館では25年間誰も手にする事がなかったらしい事に驚いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿