2025年5月27日火曜日

失態

 江藤前農水大臣の自民党佐賀県連でのコメに関する発言は誠にみっともないものだった。しかしそれを巡って、周りでは輪を掛けたような失態が繰り返されたように思う。

一つは任命権者である石破総理の対応。どうしてあの発言が報道されて即座に更迭を決意しなかったのだろう。不信任案が可決されそうな雲行きになってからようやく重い腰を上げて解任に舵を切ったのは失態と言っても過言ではない。本能寺の変の情報を入手して即毛利と手を打ち中国大返しを実行した豊臣秀吉ならあんなグズグズした真似はしなかったに違いない。首切りを即断していれば石破総理の評価もいくらか改善に向かったであろうに、折角のチャンスを見逃してしまった。

そもそも江藤前大臣を続投させて職責を全うする力があったかどうか。備蓄米放出に到るまでの過程、競争入札を行って以後も一向に備蓄米が市場に出回らない状況等を見て、あの大臣の力量では今後事態の改善は望むべくもなかった気がする。失言よりもむしろ能力の点からも解任の時期でもあったのだ。

そしてまた、失言を追求すべき野党の対応も失態と言って良いと思った。立憲民主党の議員は国会の委員会で「あの発言のどこがウケると思ったのですか」なんて質問をしていた。失言した相手と同じ土俵で相撲を取るような質問をしてどうする。そうではなくて、今後の対応方針や具体策を問いただし、その任に適格かどうかを問題にすべきではないのか。そうした質問が出来ないのは、結局野党にも担当能力がない事を暗示しているようなものだ。

政策実行能力があって、バリバリ仕事が出来て、ちょっとした失言なんか吹き飛ばしてしまう位の馬力のある政治家はいないのか。そんな人ならあんなみっともない失言はしないだろうが。

2025年5月20日火曜日

トランプ派

 富士山で遭難した人を救助するのに、現在は無料の救援活動を有料化しようという動きがあるそうだ。

遭難者の多くが危険性を軽視し十分な準備もなしに、謂わば自業自得のような形で難にあった人達で、中には一度は救助されながら反省する事なく何度も救援隊のお世話になる人もいるとか。しかもその可成りの部分が外国人であると聞くと、今まで無料であった事に呆れ、有料化は当然だろうと怒りにも似た気持ちになってくる。

そういう自分をフト覚めた目で見ると、今までさんざんトランプ大統領を批判して来たが、やっぱりお前もトランプ派ではないかと呟くもう一人の自分がいる。

トランプ氏を支持する人達の気持ちを理解したくて「ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く」(金成隆一著岩波新書)という本を読んでみた。そこに書かれているのはまさに無謀な富士山登山をして当り前のように無料で救援隊の世話になる外国人に怒りを向ける私と同じような人達の姿だった。

著者はアメリカのラストベルトと呼ばれる地域を取材し、その酒場にたむろする人達の話に耳を傾ける。かつてこの一帯の工場で働く労働者だった人達は労組の関係で当然のように民主党支持だったが今トランプ支持に変わっている。印象的だったのは次の発言だ。「かつて民主党は勤労者を世話する政党だった。ところが最近は勤労者から集めたカネを、本当は働けるのに働こうとしない連中に配る政党に変わった。」と。「働けるのに働こうとしない連中」は「出来る筈の遭難対策もしない奴」に重なる。

自分の責任を果たそうとしない奴を、しかも身内なら兎も角赤の他人をどこまで助けるべきなのか。不法移民や規則を守らない無謀な外人登山家にも、人道主義はやはり愛の手を差し伸べるべきなのだろうか。

2025年5月13日火曜日

 ひさしぶりに春が来たような気がする。

ここ数年季節の二極化が進んで、冬からいきなり夏になったり、厳しい残暑がようやく終わったと思ったらすぐさま炬燵が欲しくなるような気候だった。だがここ一か月くらいは暑さも寒さもそこそこで、半袖だと少し肌寒いが薄い長袖が一枚あれば十分という感じ。テニスをしても半袖半ズボンの人と長袖長ズボンの人が混在している。寒がりか暑がりかで着る物が変わるのが春というものだ。朝夕は適度に冷えて、お風呂が有難かったり、冷やした大吟醸が美味しかったり、春を満喫している。こんな気候がずっと続けば良いのにと思う日々である。

この連休は皆様如何お過ごしたでしょうか。私には一つ嬉しい事があった。それはこの「トライアングル」に関してである。

去年七月この連載の中から数編を選んで一冊の本として出版して頂いた。付き合いの古い人達には同窓生やらテニス仲間やらかなりの人達にご購入頂いたが、付き合いの浅い人達にはそうもいかず、去年夏から始めたミニテニスの仲間には回し読みをして貰っていた。そもそも自分が作った作品、本であれCDであれ詩集であれ、それらを他人に鑑賞をお願いするのは結構勇気の要る事である。その人の時間を奪う事でもあるし、何らかの感想を強要している感じもある。尤も今回の「トライアングル」はそれなりの自信もあって、屹度それなりに面白く読めて、暇潰しにはなる筈だと思っていたが、回し読みの終わった内の一人が「買いたい」と言ってくれたのだ。

本を読み終わって、それを手元に置いておきたいと思ってくれる事以上に著者として嬉しい事はない。最高の賛辞と受け止めた。幸い数冊手元に残っているので、次の練習日に持参しようと思う。著者のサインは要るかどうか、万年筆も忍ばせて。