2025年11月11日火曜日

捜査

 名古屋で起きた殺人事件の犯人と思われる女性が26年の月日を経てようやく逮捕された。しかもそれが被害者の夫と高校時代の知り合いだとかで、背景に何があったのだろうと、いやがうえにも野次馬根性をかき立てる。

新聞記事には県警本部の記者会見での「遺族の無念を晴らすという一念で、捜査を積み上げた結果だ。」という誇らし気な発言が載っていた。しかし事件のあらましをざっと聞いた限りでは「どうしてこの事件の解決に26年もの月日を要したのだろう。警察は本当に本気で捜査をしたのだろうか」という疑問が真っ先に湧いた。

犯行現場には犯人のものと思われる血痕が残っていたし、事件当日にはアパート近辺で傷を負った手を隠すように走り去る中年女性の姿が目撃されていたという。おそらく指紋も沢山残っていたのではないだろうか。同じように遺留品が沢山残っていた世田谷一家殺害事件なら犯人が被害者家族と全く接点を持たない人物らしく絞り込みが困難であるという事情が分かるが、今回の事件はそうじゃない。周辺の人達への聞き込みやアリバイの確認などを通じてもっと早く被疑者にたどり着く事が可能だったのではないか。

今回逮捕された女性は、県警からDNA型鑑定への協力を求められ、一旦は拒否したもののその後応じ、それで観念したという。確かに強制的にDNAを採取するのは人権の問題があるが、捜査線上に浮かんだ人の毛髪を美容室で貰って調べる位は出来たと思う。それは違法な捜査になるのだろうか。

実は先日我が家の隣の家に深夜、泥棒が入った。私の住む団地では過去に何件も泥棒被害の報告があるが、それが一向に解決する気配を見せないのだ。防犯カメラの画像を提出した家もあると聞く。お願いだから本気で悪を懲らしめて欲しい。

2025年11月4日火曜日

日米関係

 高市新総理の外交デビューは大成功だったとの評が多い。トランプ大統領との信頼関係を築く事が第一の優先事項だとされていて、少なくともトランプ大統領には気に入って貰えたようで、その事が高評価の要因のようだ。しかし贈り物やお世辞で気に入られる事と、信頼関係を築く事は全く違う。

幕末、外国との交渉において江戸の幕府が曖昧な態度で信頼を失ったのに対して、長州や薩摩は馬関戦争、薩英戦争の後処理で毅然と自分等の立場を主張して外国の信頼を獲得していった。信頼とは媚びよりむしろ毅然とした態度から生まれるものであり、表面的な仲良しムードはいざという時国益を生まないような気がする。

フェースブックで常日頃右寄りの発言をする人達は、今度の高市氏の言動に称賛の声を挙げておられるが、それは高市氏がやった事だから称賛しておられるのか、はたまた石破氏や岸田氏が同じ事をやったとしてもやはり称賛されたのだろうか?私は高市氏が横須賀の米軍基地ではしゃぐ姿を見て、大いに不安になった。

そもそも自国に外国の軍隊が常駐するのは異常な事である。まあ、戦後平和憲法で軍備を一旦放棄した関係でやむを得ないとも言えるが、やはり本来の独立国家ならいつかは解消すべき事態だろう。飛行機で出雲から羽田に向かう際、静岡辺りで大きく南に迂回し、房総半島を回り込むのは、本来日本の領空である筈の横田基地上空が米軍のもので通行出来ないからだが、この事態を右翼とか保守とか言われる人達はどう思っているのだろうか。

日米同盟をより一層の高みに引き上げるそうだが、その具体的姿が見えない。間違っても、自衛隊が米軍の戦争について行ったり、日本が米国と同じ法体系になって、あたかも51番目の州のようになったりは絶対にして欲しくない。

2025年10月28日火曜日

懸念

 高市新内閣が始動した。その積極財政の姿勢を市場は好感を持って受け入れたようで、世の中に活気が出て来る事を期待したいが、閣僚の声を聞くと若干の懸念も湧いて来る。

新しく農水大臣になった鈴木氏は生え抜きの農水族との事だが、彼の主要関心事が国民の利益にあるのか農業団体の利益にあるのか心配だ。新聞で報じられる彼の発言を見ていると、昨今の米価は妥当だと思っておられるようだ。「大量の生産を増やせば米価は下がる(から困る)」とか「備蓄米は量が足りない時は出すが、足りていれば出さない」とか。米の価格は市場に任せ、政府は介入しないとの方針は誠にご立派だが、では国際的にみて日本の米価が極めて高いのはどう思っておられるか。昨今豪州米や加州米までが高く売られているのを見ると市場の歪みも感じる。そもそも市場に米が足りているか否かをどう判断しようというのか。価格高騰こそ米が足りていないとの市場の警告ではないのか。日本の農業を守るのも大事だが、国民生活も守って欲しい。

軍拡基調も心配だ。今まで集団的自衛権の行使など公明党がブレーキ役になっていたが、それがなくなりイケイケドンドンになっている。小泉防衛大臣は「昨今近隣諸国との関係が危なくなって来たから国防予算を増やす」というような事を言っていたが、そんな事態を招いたのは政治家が外交努力を怠ったからではないのか。不粋な武器に頼らずに巧みな外交で諸国と渡り合い知恵で国を守る事こそ政治家の一番の仕事だろう。アメリカからの要求で仕方なく武器を買わなければならない事情も分からなくはないが、まず軍拡ありきは止めて欲しい。ヒトラーは軍需産業起点で経済を浮揚させ、国民の支持を獲得して行ったが、私は戦争するくらいなら不景気なままでいた方が良い。

2025年10月21日火曜日

選挙制度

 この原稿を書いている1018日時点で首班指名選挙の行方は未だ確定はしないものの、初の女性総理の誕生が見られそうだ。この原稿が紙面に載る頃には決まっている事だろう。ところで、何かの記事で知ったのだが、国の舵取りを担う総理大臣を決めるこの選挙、立候補制ではないらしい。

普通一般の選挙と言えば、その役職に就きたい人が手を挙げて、複数の候補の中から誰を選ぶか投票するのだが、日本で一番大事な人を選ぶ総理指名選挙ではこの立候補という手続きがない。だから、例えば公明党の議員は一回目の投票で「斉藤哲夫」と書くのが分かっているから、他の野党が揃って「斉藤哲夫」と書いてしまえば、各党による連立協議がまとまっていようがいまいが、斉藤氏が総理大臣になってしまう。本人がそれ程やる気がなかった場合(立候補していない訳だから)でも、皆がその名前を書けば総理大臣をやらざるを得ない。

こんな事で良いのだろうか?まあ、どうしてもやりたくなければ、就任して即衆議院を解散すれば良いのだろうけど。

選挙制度を定めた時には思いもしなかった事態が生じていると言って良いのだろうか。

首長が議会から不信任を突きつけられて議会を解散するのも、制度設計時点ではまさか自身のスキャンダルで首長が不信任される事態は想定していなかったに違いない。首長と議会が政策の違いから対立する事だけしか想定していないからこそ、首長に解散権を与えたのだろう。伊東市の市長が議会を解散したのはそういう意味で誠に恥ずかしい事件だった。

自身のスキャンダルより市政・県政の遂行の方が重要だろうと言うのなら、兵庫県知事のように自らの資質について再度有権者に信を問うのが筋だと思うが、選挙制度を悪用する鉄面皮には恐れ入る。

2025年10月14日火曜日

働いて働いて

 自民党の新総裁に高市氏が選出されて、最初の演説では「働いて、働いて・・・働いて参ります」と何度も「働いて」を繰り返した言葉が強く印象に残った。

「働いて、働いて」という言葉からは肉体労働を、ツルハシやモッコや汗水垂らす姿を想像してしまうが、勿論総理総裁がそんな事をする筈がない。デスク・ワークをする人でも松本清張などはその膨大な著作量から推察するに「働いて、働いて」という人生だったのではないだろうか。宮沢賢治などは肉体労働もデスク・ワークも両方こなす「働いて、働いて」だったような気がする。

大河ドラマ「べらぼう」に出て来る将軍徳川家斉は子作りが主な仕事だったそうで、大奥の女性を相手に「働いて、働いて」55人の子を成し、全国の大名家に養子に出したり、嫁入りさせたりして支配を広げたそうだが、これは肉体労働の一種と言えるかどうか。

総じて権力者ともなれば、自ら動かなくても部下に指示を出して業務を処理する事が多い(子作りだけはそういう訳にいかないが)から、なかなか「働いて、働いて」というイメージが湧きにくい。その中で例外は中国の清朝第五代皇帝の雍正帝ではなかろうか。彼の死因は何と、働き過ぎによる過労死だとか。詳しくは宮崎市定著「雍正帝」を参照頂きたいが、国内各所から寄せられる上奏文の全てにいちいち目を通し、自らの考えを朱書きして送り返して、一日の睡眠時間は4時間に満たなかったという。石破前首相は「総理大臣になってもそんなに楽しい事はない」と言ったが、当時世界最強の権力者だった清の皇帝でも楽しい事はなかったかも知れない。父の遺詔を書き換えてまで就いた帝位なのに。

初の女性総理誕生に若干の暗雲が立ち込めたが、高市氏の「働いて、働いて」がどんな姿になるか注目したい。

2025年10月7日火曜日

SNS

 歳を重ねてからSNSに出会い、嵌ってしまう人が結構いて、そういう人の多くが「今までテレビや新聞に騙されていた」と感じるのだとか。マスメディアが報じない情報に接して、目が醒めたような感覚になるらしい。しかし、その危険性について実感する事が今度の帰省中にあった。

元来無駄な事の嫌いな私は、スマホのプランも自宅にWIFIがある事を前提に月に0.5Gという最小限のパケット容量で契約している。しかし、帰省した時にはスマホが唯一ネットにつながる手段になるので、最大の月10Gに増やしても、それでもパケットが枯渇しそうになる。

だからメールチェックなど個人的な事は仕方ないとして、ネットニュースを見たり、何か検索して調べる時は図書館のパソコンを利用する事にしている。そしていつも私が利用しているヤフーの初期画面を見て驚いた。そこに並んでいるニュースがどれもこれもつまらないものばかりなのだ。内容ははっきり覚えてないが、名前も知らない芸人のスキャンダルだったり、グルメ情報だったり関心のない事項が並んでいる。

普段自宅で利用している時は私の好みを察知して、好みにあった事項が並んでいるのだ。図書館での画面は、まっさらか又は間に使った人の好みが反映されて、まるで違う内容になっている。これこそSNSと付き合う時に注意しないといけない事なのだ。SNSを運用する側にしてみれば如何に閲覧数やクリック数を増やすかにしか興味がないから、操作する人の好みに応じてそれなりの情報しか流さない。そうして偏った情報によって、知らず知らずの内に誘導・洗脳されてしまう。

SNSに洗脳されないためにも、自分に厳しく他人にやさしく、つまり自分と同じ意見には慎重かつ批判的に、反対意見には謙虚に寛容に、の姿勢で臨むのが丁度良い。

2025年9月30日火曜日

SDGs

 どうしても好きになれないトランプ大統領だが、たった一つ彼の主張に共感できる事がある。地球環境問題とそれへの対策についてである。

23日の国連総会演説でトランプ大統領が気候変動問題を「史上最大の詐欺」と非難したと報じられた。最近SDGsとか称して行われている様々な運動に対して私も眉をひそめている一人である。

いや、地球環境がどうなっても良いと思っている訳ではない。人間の活動が地球に悪い影響を与えているならばそれを是正する必要があるのは認める。だが、声高にSDGsを唱える人達は本当に地球の事を考えているのか、自分の懐を優先しているのか、時々疑問に思うのである。

テレビのニュース番組でコメンテイターと呼ばれる人が夏の暑い盛りに厚手の生地のスリーピースを着て下には長袖のシャツを着ていたりする。エアコンが効きすぎてスタジオが余程寒いに違いない。電力を無駄に消費して平気な人にSDGsを語って欲しくない。

先日JALの飛行機に乗ったら、半袖だと寒くて仕方なかった。長袖で乗務しているキャビンアテンダントに何か羽織る物を所望したら「国内線には毛布の備えがありません」と断られた。事前のアンケートで暑がりの人しか乗っていない筈だから毛布を用意しなかったというなら分かるが、国内線だから用意しないとはどういう意味か。機内温度は長袖の自分等を基準にするのでなく、半袖の乗客を優先して欲しい。

地球環境を思うなら江戸時代の生活を参考にすべきである。太陽の恵みの範囲内での生活を満喫する知恵があった。古着の回収・再生は勿論の事、糞尿すら有価物として取引された。本気でSDGsをやれば経済は停滞するかも知れない。その覚悟なしにSDGsを語るのは詐欺に近いような気がする。