2015年5月19日火曜日

十手先

電王戦で垣間見えたコンピュータの意外な弱点とは、なんと十手先もコンピュータは読めないという事だった。詰め将棋のように一本道であれば何百手も先まで読めるコンピュータが序中盤の手の広い局面だと十手先に仕掛けられた罠に気付かなかったのだ。
コンピュータにゲームをやらせるという事は、そのゲームの局面を数学的に表現する方法を考え、ルールに従って到達しうる出来るだけ多くの局面を想定して、それぞれの局面を評価して一番良い結果が得られるように次の一手を決める事だ。全ての局面を網羅できればいいが、十手先で考えられる全ての局面は将棋の場合107374182400億手になるという。仮に一分で一億手を読んで評価する事ができても、これを全て読むためには20万年かかる。だから数手先にこれなら絶対に有利だとか不利だとか判断する局面があったらそこで読むのをストップして別の手を検討する事になる。
まさに今回コンピュータが陥った罠はそこにあって、二手先に馬を作る事ができるなら絶対有利なはずだと、そこで判断をストップしてしまったのだ。実は十手先でその馬をタダ取りされる順があるというのに。
開発者はソフトにそういう欠陥がある事を知っていて、プロ棋士を相手に馬をタダ取りされては勝つ見込みがないとして早々に投了してしまった。だが、どの段階でコンピュータが自分の過ちに気付くのか、そして気付いたときどういう反応を示すのかを見たかった。最近はコンピュータが自ら学習する機構についても研究が進んでいる。
電王戦は勝ち負けもさることながら、人工知能の限界を知り発展させる事がより上位の目標としてあるはずだ。負けを認めるのも知能の一つ、コンピュータが負けを認めるまで続けて欲しかった。

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