シンガポールでの中国と台湾の首脳会談は歴史的握手として報じられた。そんな中、台湾で「貴方は中国人ですか台湾人ですか」とのアンケートが行われ、「台湾人であり、中国人ではない」と答える人が多数を占めたとあるニュース番組が伝えていた。それを見て五年前に福島は会津の近くにある大内宿での経験を思い出した。
三澤屋という老舗の蕎麦屋で名物の高遠蕎麦(会津でどうして高遠なのか、店の主人に聞いたがその謂われをここで書く余裕がない)を食べながら隣の夫婦の会話が気になった。中国語のようであり、どうもちょっと違う。朝鮮語でないのは明らかだ。顔つきは東アジアの顔に間違いない。思い切って覚えたばかりの中国語で話しかけて見た。「ニンシー チュンゴォレン マ」(貴方は中国人ですか?)すると驚いたような戸惑いを見せた後、しばらくの間をおいてゆっくりと明確な答えが返って来た。「ブー シー」(違います)
以下ブロークンな英語で情報交換した内容は、彼等は香港からやって来て、彼等が話していたのは広東語だ、との事。日本で教えられている北京語と広東語とは大きく違う。例えば「玉木」は北京語では「イームー」と発音するが、広東語では「ヨッモッ」だとか。ギョクモクは広東語に近い。
香港人の中にも自分を中国人とは思って欲しくない人がいるらしい。台湾に関しては三十年程前の驚きが忘れられない。
台湾の友人に招かれて台北を訪問し彼の家族と会食をした。その中で彼の姉が盛んに「私たち」という言葉を使う。戦前の生まれとおぼしき彼女は日本語を流暢に話した。文脈からどうも良く理解できないので「私たちってどういう意味ですか」と尋ねると彼女は憤慨したようにこう言い放ったのだった。
「何言ってるの、私たち日本人のことよ!」
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