2016年4月26日火曜日

地震

熊本の地震は発生から十日以上たっても未だ全くおさまる気配を見せない。被災地の方々の心中を察するに言葉もない。ただただお見舞い申し上げる次第である。
それにしても現代の観測技術や知見を以ってしても全く将来の見通しが立たないとはどういう事だろうか。トンネルの向こうに少しでも灯りが見えれば、辛い避難生活にも希望が持てるだろうに。
かかる状況で全く予測不能であるとなると、そもそも地震の予知なんて絶対無理なのではないかと思われてならない。熊本大分の限られた地域に注目して全神経を集中しても予知が出来ないのであれば、日本列島のどこで起こるか分からない、場所を特定しない予知なんて出来るわけがない。しかもこの地域は阿蘇山の関係で他の地域より多くの観測機器が設置され、より多くの情報が入手できる場所だ。そこで駄目なら観測機器がより疎な場所での予知なんて出来るわけがない。
ニュースで報道される、横軸に時間経過を取って、縦軸に地震の回数を表示する累積グラフにも疑問を感じる。地震の回数を累積して何の役に立つと言うのか?縦軸にどうしてエルグをとらないのだろう。素人考えかも知れないが地震のマグニチュードから計算されたエネルギーを累積し解放されたエネルギーと地震発生前に蓄積されたエネルギー(これは当該地盤の弾性係数と、GPSで測定した地盤の変位データから推定できるはず)とを比較すれば何らかの見通しがでるのではないか。
地震発生後、当初気象庁の会見を担当したのは地震津波監視課長だった。しばらくして次には地震予知情報課長に代わった。課名が長いのを見ると職務が細分化されすぎているのではという危惧を感じる。勿論そんな事は下種の勘ぐりにすぎないのだろうが。

2016年4月19日火曜日

皆様色々な会に入っておられることかと思う。県人会であったりテニスの同好会であったり。会費は年間数千円のものから様々だろうが、中で特に会費の高い会は何だろう。サラリーマンの中では特別な高級取りでなくとも年間数百万円も会費を払っている会がある。しかもそれからの脱退は許されない。生まれた時から入会を義務付けられ、余程の事がない限り死ぬまで会員であり続けなければならない。その会は国家という名前で、その会費は通常税と呼ばれる。
勿論会費が高いだけあって国家は様々な便益を会員である国民に与えてくれる。何より生活の安全を確保してくれるし、生活を快適にするためのインフラや教育などの社会システムを提供してくれる。こうした便益が会費に見合っていると多くの人が思っていれば良いが、そのバランスが崩れ会費に見合っただけの便益が提供されないと皆が感じると、会の運営担当者を交代させようと、政権交代や激しい時には革命が起きる。
会の運営者である政府首脳がタックスヘイブンに逃れ、会費の支払いを避けようとするのは自己否定に等しい。法人がタックスヘイブンに逃れたい気持ちは分からなくもないが、会費を払いたくないのなら、便益は諦めるべきだ。タダ乗りはいただけない。

本来なら各国が出来るだけ安い会費で最大の便益を提供すべく競争すべきなのだ。現在は言葉の壁に守られて国家は安穏としているが、人工知能による自動翻訳で言葉の壁が取り除かれて、国民が自由に自分の住みたい国へ移動を始めたら国家は真剣に会費当りの便益最大化を考えるのではないか。夏涼しくて冬暖かく治安も良いカリフォルニアのように好条件の場所はやはり会費が高くなるのだろうなあ。でもそうやって需要と供給の関係で税率が決まるなんて面白いと思うのですが。

2016年4月12日火曜日

東工大と英語

新年度を迎え入社式や入学式の様子が伝えられている。東京工業大学では新入生を歓迎する学長の挨拶が英語で行われたそうだ。英語教育に力を入れるのは結構な事だとは思うのだが、ちょっと違和感を禁じえなかった。時代錯誤ではないか、とも思うのだ。何故ならあと十年もすればAIによる自動翻訳で言葉の壁はなくなるのではないかと思うから。
ここ数回取り上げている人工知能だが、その応用分野として有力な一つに自動翻訳がある。既に二〇一二年マイクロソフト社の研究者が中国の天津で行った講演では、その内容がAIによって同時通訳され、しかも講演者の肉声に近い音でスピーカーから流されて会場のどよめきを誘ったと言う。機械に人間の言葉を理解させる技術はもの凄い勢いで進歩している。
私のスマホにはグーグルが開発した音声認識装置が搭載されているが、「自民党の」と「自民と宇野」をちゃんと聞き分けてくれる。この二つは昔キーボードから入力した際に誤変換されたものだ。音声の抑揚までも判断材料にしている事が分かる。
専門家によれば現在は言葉の出現頻度を統計分析して他言語に置き換えているだけだが、もうすぐ意味を理解して翻訳できるようになるだろう、との事。あと十年もすれば小型翻訳機を携えて海外旅行が楽しめるようになるかも知れない。

文学作品の翻訳には人間ならではの微妙なニュアンスがあるが、学術論文なら翻訳は人工知能に任せておけばいい。東工大に入るような優秀な頭脳を英語で煩わせるような事をしたくない。かつてソ連が宇宙開発でトップを走っていた時、工学系の学生にロシア語熱が高まった事がある。東工大の目指すべきはMITやハーバードの学生が日本語を勉強したくなるような、そんな成果を出すことではないのか。

2016年4月5日火曜日

地図と医者(続き)

二十年ほど前、ある物流センターの計画に際して最適立地を検討するためデジタル化された地図情報が必要になった。運営コストを最小化するため道路の情報をコンピュータに入れ、車両運行のシミュレーションを行うためだった。その道路情報は当時何百万円もしてとても個人で手の出るものではなかった。それが今ではカーナビに組み込まれ誰でも利用できるようになっている。
病気を診断したり、健康チェックしたりするシステムも同じように急激に価格が下がるだろう。血液や尿の検査をする装置も需要が増えれば価格も桁違いに下がるに違いない。三度の食事の写真から栄養チェックする画像認識技術もその内現われるだろう。脈拍や血圧をデータとして蓄積するウェアラブル端末は既にある。
個人の健康に関するデータをコンピュータに取り込む技術は最早特別なブレークスルーはなくとも実現可能なものばかりだ。ゲノム情報も取り込まれるだろう。今までの問題はそうして集めた膨大なデータを分析判断する能力が人間にはない事だった。しかしビッグデータの取り扱いこそコンピュータが得意とする分野である。
毎日個人が記録する膨大なデータ、それをさらに何億人分も集め、どういう傾向の人がどういう病気になったのか、特徴量をコンピュータが見つけ、診断知識を蓄えて行く。囲碁の名人を負かした人工知能は医者の名人も負かすに違いない。注射や手術など治療分野はともかく、予防医療、診断、投薬の分野では人間の出る幕はなくなるだろう。
殆ど全ての車にカーナビが標準装備されているように、近い将来人工知能による健康チェックシステムを全ての人が持つようになるだろう。私の臨終の際に脈を取るのはひょっとしたら人工知能を搭載したコンピュータかも知れないのだ。