2016年4月5日火曜日

地図と医者(続き)

二十年ほど前、ある物流センターの計画に際して最適立地を検討するためデジタル化された地図情報が必要になった。運営コストを最小化するため道路の情報をコンピュータに入れ、車両運行のシミュレーションを行うためだった。その道路情報は当時何百万円もしてとても個人で手の出るものではなかった。それが今ではカーナビに組み込まれ誰でも利用できるようになっている。
病気を診断したり、健康チェックしたりするシステムも同じように急激に価格が下がるだろう。血液や尿の検査をする装置も需要が増えれば価格も桁違いに下がるに違いない。三度の食事の写真から栄養チェックする画像認識技術もその内現われるだろう。脈拍や血圧をデータとして蓄積するウェアラブル端末は既にある。
個人の健康に関するデータをコンピュータに取り込む技術は最早特別なブレークスルーはなくとも実現可能なものばかりだ。ゲノム情報も取り込まれるだろう。今までの問題はそうして集めた膨大なデータを分析判断する能力が人間にはない事だった。しかしビッグデータの取り扱いこそコンピュータが得意とする分野である。
毎日個人が記録する膨大なデータ、それをさらに何億人分も集め、どういう傾向の人がどういう病気になったのか、特徴量をコンピュータが見つけ、診断知識を蓄えて行く。囲碁の名人を負かした人工知能は医者の名人も負かすに違いない。注射や手術など治療分野はともかく、予防医療、診断、投薬の分野では人間の出る幕はなくなるだろう。
殆ど全ての車にカーナビが標準装備されているように、近い将来人工知能による健康チェックシステムを全ての人が持つようになるだろう。私の臨終の際に脈を取るのはひょっとしたら人工知能を搭載したコンピュータかも知れないのだ。

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