テニスファンとして今週はこの話題を取り上げないわけにはいかないだろう。テニスファンではない人でもそれに異存はないはずだ。全米オープンテニス大会での優勝、本当に素晴らしい快挙だった。決勝戦の日は近くに住む娘が孫を連れてWOWOWでの生中継を見に早朝五時から我が家にやって来た。
決勝戦は全く危なげない完勝と言っていい内容だった。見ていて一番心配したのはベスト8を賭けて戦った対サバレンカ戦。第二セットを奪われた時は例の精神的弱さが出てしまったのではないかと心配した。その時以外今大会の大坂選手のプレーを見て特に感銘したのはその冷静さだった。
優勝後のインタビューでの発言「一番大切は、なんか・・我慢」という言葉に今大会の大坂選手の成長を見た。今まではとにかく強打。勝敗より強打とでも言うように強打して相手の鼻を明かすのが彼女の目的であるかのようだった。昨年の全仏オープンで同僚のオスタペンコが優勝し、グランドスラム制覇に先を越されてからは対抗意識からか余計に力が入っていたように見えた。だが今年の全米は違った。
強打でエースを取る事はたまらない快感だが、試合に勝利する喜びはより尊く、そのためには地味な努力が欠かせない。それに大坂選手が気付いたような気がする。「我慢」なんて普通はつまらないものだ。思いっきり我を通したい、思いっきり派手に振舞いたい。だけどそれを我慢し自制し冷静に事に対処する。それが出来るためには自信が必要だ。大坂選手は「自分に自信を持ち続ける事」を心掛けたとも言っている。
518回に紹介した黒澤映画・椿三十郎に出てくる「本当に良い刀はいつも鞘の中に収まっているものですよ。」の台詞を思い出す。大坂選手は自らの名刀を振り回すのではなく鞘の中に収める術を知ったのだ。
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