2018年11月13日火曜日

六か月

凡そ半年ぶりに出雲に帰省した。六か月という時間は生き物にとってどんな長さなのか。
植物にとっては生命力を誇示するのに十分な時間のようだ。庭に雑草が生い茂るのは想定内だとして、玄関先のタイルの目地のわずかな土に堂々と根を張っている草を見ると思わず脱帽したくなる。それだけではないコンクリートの細いクラックにも名も知らぬ草が根を張っていた。
昆虫にとっては長すぎる時間だったか。家の中に入ってみると、主のいなくなった空間を我が物顔に走ったり飛んだりしたであろう小さな虫の死骸が見受けられる。ゴキブリが力尽きて野垂れ死にしているのはまあ理解できるとしても、窓枠に蜂の死骸を見たときはびっくりした。どうやって部屋の中に入ったのか。箪笥を置いた入隅などに蜘蛛の巣があるのも驚きだ。こんな所で陣取っても獲物を捕らえる可能性は殆どないだろうに。
人間にとっての六か月はどうか。ケーリー・グラントとデボラ・カーが主演する「めぐり逢い」では六か月が一つのキーワードのように出てくる。物語はケーリー・グラント演じる名うてのプレーボーイ、ニッキーがヨーロッパからニューヨークへ向かう船の中で出会った女性テリーに魅せられその人生を変えていく話だが、船で運命的な出会いを果たした二人が下船後再会を誓うのが六か月後、その時の悲劇からどんでん返しの結末までがやはり六か月。
船に乗る前に既に大富豪の娘と婚約が整っていたニッキーだが、ニューヨークに到着後インタビューで結婚はいつの予定か聞かれた時、既に婚約者から心の離れたニッキーは「六か月後だ」と答える。あたかもそれが永遠の未来であるかのように。
真意を確かめたり、諦めたり、決心を固めたり、それが六か月なのだろうか。

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