2018年12月11日火曜日

市場原理


地方自治体の水道事業の民間委託を可能にする水道法改正案が可決された。人口減や水道管の老朽化等の課題に対し、民間のノウハウを活かしコスト削減などの経営改善を進めるというのだが、果たしてそんなにうまく行くのだろうか。

民間企業がコスト削減の努力をするのは市場における競争に勝つためであり、利益を上げるためである。自治体がやって採算の取れない事業を民間がやればうまく行くというような単純なものではないはずだ。

民間事業の基本原理は利益追求であって慈善事業ではない。私利私欲の追求という強烈な原動力を利用して資本主義社会は発展して来た。それを支えてきたのは市場における競争である。民間企業があこぎな事や杜撰な事をしないのは、聖人君子だからではなく、そんな事をすれば市場からはじき出されるからである。市場と言うたががあるからこそ秩序が保たれて来たと言ってもいいだろう。

水道事業においてそうした競争原理が働くのだろうか。一つの地域に複数の企業が併存し、品質と価格を勘案してある人はA社から水を買い、またある人はB社から買う、なんて事が出来るのだろうか。一企業が事業を独占すれば価格が高止まりするのは眼に見えている。

監視をしっかりやれば良い、という意見もありそうだ。だが監視をする側も人間だ。癒着が生じないと断言できる人はいないはずだ。関係者が聖人君子でなければ機能しないような仕組みはうまくいかない気がする。共産主義が失敗したのも人間が聖人君子ではあり得なかったからではないか。

かつて年金記録の管理の杜撰さが問題になった時、民間ならこんな事はあり得ないと言われた。その一方で耐震偽装問題の時は、建築確認は民間に任せられないと言われた。水道事業は果たしてどうか。

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