年末から年明けにかけて関東地方では良い天気が続いている。時々風が強かったり、寒い日もあるが、雨の日は一度もなく、降雨ゼロの日数の記録を更新する勢いらしい。私の六十数回の正月の中で今年は最も穏やかな年の一つに数えて良さそうだ。
振り返って過去の正月を思うと、一番辛かったのは社会人になって二・三年目、年末に自然気胸を患い、入院中に迎えた正月だった。発症したのは確か十二月の二十三日前後だったと思う。朝、独身寮から外に出て冷たい外気を吸ったとたんに胸を襲った激痛を忘れる事は出来ない。病院に行って「肺に穴が開いている」と言われた時の驚きは大変なものだった。ああ、短い人生が終わるのかと覚悟を決めた。医師は即入院を勧めたが、上司の配慮で身寄りのない勤務地の大阪で入院するより島根に帰ったらどうか、と帰郷を許された。
出雲に帰って、馴染みの医者に診てもらい、肺が破れたとは言え左程重篤な病気ではないらしい事を知って一安心した。松江の病院を紹介してもらい、入院する事になった訳だが、病状もだいぶ良くなり、正月三箇日は家に帰る事を許された。配慮に感謝したが、今から思えば病院も正月休みで人手が手薄になるし、症状の軽い患者はいない方が好都合だったのだろう。
それを思い出して何故かカルロス・ゴーン氏の事を思った。検察は正月も休みなしに捜査や尋問を行うのだろうか。検察官だって人間なら正月気分を味わいたいだろう。もし彼らが雑煮やお屠蘇で団欒しているのに、ゴーン氏だけが獄舎につながれているとしたら、自業自得とは言え何か可哀そうになってしまう。
三箇日が過ぎて病院に戻った私はやたら眠りこけた事を覚えている。たった三日の娑婆だったが入院中の身にはそれ程の喧噪だったのだ。
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