2019年3月5日火曜日

宋襄の仁


中国の春秋時代、凡そ二千六百年程前の事。宋の襄公が楚と戦った際、敵の陣容が整わない内に攻めるべきだという部下の進言に対して「人の困っているときに苦しめてはいけない」と言って攻撃せず、結局楚に負けてしまったという故事にちなんで、宋襄の仁とはつまらない情け、不必要な思いやりをすること、と辞書に載っている。だが、情けや思いやりにつまらないものや不必要なものがあるのだろうか。いつでもどこでも情けや思いやりは大切なものだと思うのだが。

人と人との間における徳目は国と国との間では全く通用しないようだ。人が損得だけを基準に行動したら、何と卑しい人間かと思われる。デコレーションケーキを分けた時に、自分の取り分が小さいと言って騒ぎ立てたら軽蔑の対象になるだけだ。ところが国家間の交渉はいつも損得だけを基準に行われるようだ。小さな無人島を、資源もないし、本当は我国のものだけど貴国との友好のためその島は譲ります、などという政治家がいたら国民全部から総スカンを食らうに違いない、襄公のように。こう考えるとそもそも国家に徳目などあるのか疑わしくなる。

唯一自由貿易だけは徳目に加えて良さそうだ。

天国と地獄の比較をした小話がある。地獄ではテーブルに美味しい料理が沢山盛り付けられているが、各人の箸が長すぎて、誰も目の前の料理を口にできない。天国はどうか。美味しい料理が沢山あるのは当然で、箸も同じように長い。ただ、違いは各人がその長い箸を使って互いに向かい合う人の口に料理を運んでいると。
この話、自由貿易と保護貿易の例えにも使えると思うがどうだろう。経済圏を囲い込んで他を排除しようとするのは結局どの国のためにもならない事は歴史が証明している。トランプさん、そうですよね。

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