2019年6月11日火曜日

全仏テニス


一度でいいから錦織選手にグランドスラムのタイトルを取って貰いたいという願いが今回も叶わなかった。ベスト4に残った選手達の超人的なプレーを見ていると、その壁の厚さを嫌というほど感じてしまう。こんな凄い動きをする選手が今後現れるのだろうかとさえ思うが、きっともっと凄い人が出てくるのだろう。

そう思う程テニスの進歩は目覚ましい。三十年前の全仏の決勝戦のビデオを見た。時は一九八九年、現在錦織選手のコーチを務めるマイケル・チャンがエドバーグを倒し十七歳最年少で全仏を制した試合だ。ラケットはもう今のような所謂デカラケになっているが、二人が打ち合う球の速さを見ると現在の女子の試合を見ているようだ。三十年前はその凄さに目を見張ったのに。

数あるスポーツの中でテニス程進歩や変化の激しいものはないのではないか。一九七〇年頃のロッド・レーバーやケン・ローズウォールのテニスを見ると、我々素人でも頑張れば何とか対抗できるのではないかと思ってしまうし、戦前になるがフレッド・ペリーなどの試合は半分遊んでいるのではないかと錯覚さえする。服装もサラリーマンが上着を脱いだような格好で、長いズボンにワイシャツでプレーしている。

それにしても三十年の時間は大きい。マイケル・チャンが獲得した優勝賞金は四千二百万円、それでもその五年前の倍の金額だったそうだ。それが今では二億八千万円。日本のGDPはこの三十年ずっと止まったままなのに。それもそのはず、マイケル・チャンの肩には三菱のエンブレムがあり、エドバーグの袖にはFUJIのマークがついている。日本企業が幅を利かせていた時代だった。大会で時計を提供しているのも今年はロレックスだが、三十年前はセイコーだった。ああ、この三十年。

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