2020年1月14日火曜日

国境


ゴーン事件は国の管理の埒外で国境を越えたという点で金大中事件と横田めぐみさんを思い起させた。違いは越境が本人の意思に沿って行われたかどうかだが、流石に本人の意思に反して飛行機で移動するのは難しかろう。長時間箱に閉じ込めておくわけにはいくまいし、箱の中で騒がれたらいくらなんでも税関の職員が気付くだろう。

本人の意思で脱国(広辞苑にこの言葉は載っていない。)すると言えば音が似ているが脱北を思い起こす。金王朝の圧政を逃れて脱北する人とゴーン氏の違いと言えば、支援者を雇うだけの資金力があるかないかだろう。ゴーン氏がもし徒手空拳で脱国したのならいくらか評価してあげようという気にもなる。

ところで国が国境を設けて人の移動を管理するという事にはどんな正当性があるのだろうか。国境を見る機会は意外と少ない。スペインとポルトガルの国境は日本の県境と同じで何もない。オーストリアとチェコの国境は道路沿いにはかつての検問所が空き家としてガランと残っているが、道路の両側に広がる耕作地には人の移動を制限するものは何も見えなかった。

国境を見たければイスラエルへ行けば良い。ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区には鉄条網で作られた境界が延々と続く。エルサレム市内にもパレスチナ人の居住区域との間にコンクリートの高い壁がある。北朝鮮の国境も恐らくそんな感じだろう。
要するにイザコザを抱えている国か、国民を奴隷扱いしている国だけが国境を厳重に管理せざるを得ないという事ではないか。その国境も人間が空を飛べない事を前提にしており、もしドローンが発達して人間が個人として数百メートルを自由に飛べるようになったら機能しなくなる。その時初めて真に国民のための国家が生まれる、そんな気がする。

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