連日の雨、テニスは中止になるし、洗濯もままならない。しかしそんな事くらいでこぼしていたのでは被災地の人達に申し訳ない。洪水で家が流されたり、家の中が泥だらけになったり、ましてや関係者に死者が出たらどれほど悲しいだろう。悲しさを通り越して怒りを感じたり、明日からの生活再建を思って自暴自棄になったりしそうだ。
幸い、七十年近く生きて来て、大きな災害に遭った事がない。地震で家が潰れたり、火災で家財一式焼けてしまったり、妙な犯罪事件や大きな事故に巻き込まれたり、そんな経験がない事はなんと幸せな事かと思う。
唯一の記憶は小学四年の時、家が床上浸水した事だ。今と同じ、梅雨の終わりで丁度夏休みに入る頃だった。部屋の中に櫓を組んでその上に畳を乗せ水から守った後、父が私を抱っこして避難させようとした時、外は大人の太ももまで水が来ていた。妹と二人は親戚の家に預けられ、両親は屋根裏に布団を敷くだけの空間を作ってしばらくそこで暮らした。当時は避難所とか公的支援はあまりなかったのかも知れない。夏休みの後半には家に帰る事が出来たように思う。と言うのは家で聴いた雨の音を今でも鮮明に覚えているからだ。夕立が屋根を打つ音を聴くとすぐに洪水のシーンが思い出されて恐怖で小さな胸が震えた。今度の洪水でも同じようなトラウマを抱えた小学生が熊本にも岐阜にも沢山いるのではないか。
日本では水を司る神として竜神が各地で祀られてきた。それが仏教の八大龍王と結びつき、雨乞いの対象となったとされる。空海が京都の神泉苑で雨乞いをした時も龍王が現れ雨を降らせたと伝わる。だが、今回はしばらく雨はいい。金槐和歌集にある源実朝の願いを一緒に念じたい。
時により過ぐれば民のなげき也 八大龍王雨やめたまへ
0 件のコメント:
コメントを投稿