2020年7月21日火曜日

記者会見


藤井新棋聖の誕生は誠に素晴らしい事だった。渡辺三冠を下しての結果だから文句のつけようがない。コロナ禍で対局が延期されていたが、新記録に間に合って良かった。ただ局後に行われた記者会見には強い違和感を禁じ得なかった。
対局当日夜の記者会見、主催者や居並ぶ記者達の中に本人の置かれた状況をおもんばかる人はいなかったのだろうか。あの対局の解説者だった久保九段は言っていた。「対局の翌日は何も予定を入れないようにしています。対局で疲れ切って何も出来ないからです。」それ程対局は疲れる。しかもその週の月曜と火曜は北海道で二日制の対局をこなし、一日の移動日を入れて大阪での対局だった。家にも帰っていないし、家庭料理も食べていないのだろう。本当なら対局後すぐに家に帰ってお母さんの手作り料理で一杯、いやまだお酒はいけないが、ともかく体と精神を休めたいところだったはずだ。
それでも藤井新棋聖の態度はだれよりも大人だった。カメラマンからの右を向け、左を向け、花束をもっと上げろ、などの注文付きの長時間の写真撮影に素直に応じ、入れ替わり立ち替わり出てくるまるで芸能界のゴシップでも扱うかのようなノリの質問にも丁寧に応じていた。
その様子を見てテニスの試合後の勝利者に対するオンコートインタビューを思い出した。質問者はテニスを良く知っている元選手などで時間も十分程度と手短に行われ、カメラマンは自ら動いて良いアングルを探す。事情を良く知っている人からの的を得た質問に、疲れているはずの選手も応対を楽しんでいるようだ。将棋でも例えば世事に明るい故米長邦雄九段とか故芹沢博文九段などが代表して会見すれば面白かっだだろう。
それにしても記者達は質問の内容で自分の知的レベルが試されているという自覚を持つべきだと思う。

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