2020年11月10日火曜日

美醜

 ブロブフィッシュという深海魚をご存じだろうか。イギリスのTHE UGLY ANIMAL PRESERVATION SOCIETY(醜悪動物保存協会とでも訳そうか)が開催した「世界で最も醜い生き物コンテスト」で栄えある一位に輝いた魚だそうだ。ネットでその写真を見ると、確かに一位の栄冠に相応しい相貌をしている。しかし、どうしてこういう姿形を醜いと感じてしまうのだろうか。

利己的遺伝子仮説に従えば、より良い遺伝子を残せそうな個体を美しいと感じるように我々はプログラムされていると考えるべきだろう。より良い遺伝子とはより環境に適合しやすい遺伝子であり、強く生き延びる可能性の高い遺伝子と言える。ブロブフィッシュも人間がどう思うのかは知った事ではなくて、彼等の中で美男美女を交配相手として探しているに違いない。もっとも我々が見ているのは一気圧の環境に置かれた姿であり、深海の高圧下では彼等ももっと引き締まった顔をしているのかも知れないが。

ところで人間世界でヤセ型の方がデブより好まれるのはどうしてだろうか。元気な子孫を残すという観点から言えば太っている方が子育てには適しているようにも思える。胎内にいる時の栄養補給の点からも、母乳を与えるという点からもふくよかな体型の方が良いと思うのに、美を競うようにたおやかに腰を振って歩くファッションショーのモデルはおしなべて頼りないほどに痩せている。そういえば「たおやか」には「嫋やか」という字が当てられる。人間は利己的な遺伝子から解放されて弱さを許容しているのだろうか。

人間に肥満という体型が出始めたのはごく最近、少なくとも数千年前農耕技術を獲得して食料の不安が軽減されてからの事だろうから遺伝子もどう対応したら良いか戸惑っているのかも知れない。因みに野生の肉食動物の死因のトップは餓死だそうである。

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