新型コロナウィルス対策として打ち出されたGoToキャンペーンだが、第三波の感染拡大を受けてその存続か中止かの判断を巡って政権は苦境に立たされた。その頃ニュース番組で良く耳にする「GoToトラベル」が何だか「GoToトラブル」に聞こえてしまった。政権の苦悩を暗示しているかのような音の響きだった。
そんな時、ある本を読んでいたら「英語のトラベルはトラブルと語源が同じだといいます。」という文章に遭遇した。その本の名は「ひらがなでよめばわかる日本語」、著者は中西進さん、あの「令和」という元号の発案者とされる人だ。そんな立派な人の言う事にケチをつけるなんて誠に恐れ多い事ではあるが、しかしトラベルとトラブルが同じ語源を持つなんてとても信じられない。確かにカタカナで書けば似ている二つの言葉だが、英語にすれば綴りも違うし発音だって全然違う。著者の言い分は「(旅では)日常とは違う、さまざまな問題が起きる」からだという事で、古代の日本人にとっても「『たび』は安寧な生活を捨てる、つらく苦しいものだった」というのがその根拠となっている。万葉集の泰斗が言うのだから後半部分はその通りなのだろう。
この本、図書館で見つけて読み始めたのだが、最初の十数頁があまりにも面白くて手元に置いておきたくなった。我々は言葉を聞くと、ついどういう漢字を書くのか気にしがちだが、日本語はその音に意味がある、と言う。「め」は目であり芽でもある、「はな」は花でもあり鼻でもある。どちらも本来同じ意味なのだ。鼻は顔の中でも特に目立つ存在だし、花も同じで良く目立つ。音に日本人の感性が込められているのだ。
本の奥付きを見ると、平成二十年発行、令和元年第六刷とある。新元号が令和になって急に売れ出したものと推察する。
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