人間が犯した刑事事件ならどんな凶悪事件であろうと必ず弁護士がつく。しかし今度ばかりはロシアの弁護をしようという人が現れない。物事を正しく理解するためには双方の主張を聞くべし、という原則に立って、ロシアを、プーチン大統領を弁護したらどうなるだろうかと考えてみた。以下はあくまで一種の思考実験として論じる事であり、プーチンを弁護するなんて玉木はとんでもない奴だ、などと思わないで頂きたい。
学者の中にはNATOの東進を約束違反だと非難するプーチンに対して「一部の政治家の発言をNATOの総意と見なすのは無理がある」と言う人がいる。それはいくら何でもNATOに肩入れし過ぎだろう。民法に表見代理の規定があるように、それなりに地位のある人の約束ならロシアがあてにするのは当然だしNATOにもそれなりに尊重すべきだ。プーチンはNATOの「見下した姿勢」が我慢ならないと言っている。
ウクライナがミンスク合意を軽視した事も問題だ。ゼレンスキー大統領は国内での人気低迷対策として、トルコから買ったドローンでドンバス地方の親ロシア派に攻撃を仕掛けていたようだ。NATOはウクライナにミンスク合意の遵守をもっと強く勧めるべきではなかったか。ロシアの出方を興味本位で眺めていたという事はなかったか。
ロシアはドンバス地方の二つの「人民共和国」と「友好協力相互援助条約」を締結した。「安全を確保する」との名目で、親露派の支配地域にロシアの軍事基地の建設と使用や相互の防衛義務も規定している。有効期間は10年間で自動延長の規定もあるなんてまるで日米安保条約を参考にしたかのようだ。ロシアは当該地方が自分の領域だと思っているから血を流して戦っているが、アメリカは恐らくそこまでしない。それが日米安保との違いかも知れないが。