2022年4月12日火曜日

ダブルスタンダード

NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀」の新しいシリーズが始まった。第一回は「モハメド・アリ 勇気の連鎖」と題してモハメド・アリの活躍がオバマ大統領の誕生につながったという内容だった。

アリは一番油が乗っている二十代後半ボクシング界から追放されていた。ベトナム戦争への徴兵を拒否したためだ。罪もないベトナム人を殺すのは嫌だ、という彼をアメリカ社会は許さなかった。今もし、ロシアの若者の誰かがウクライナで人を殺すのは嫌だと徴兵を拒否して、それを理由にロシア政府が彼を裁判にかけ刑を課したら、それでも世論はロシア政府を擁護しその若者を責めるのだろうか。

アメリカがベトナムで戦争を始めたのは共産主義の拡大を阻止するためだった。ロシアがウクライナで戦争を始めたのはNATOの拡大を阻止するのが一つの目的だ。ウクライナで民間人が多く殺害されたように、ベトナムでも多くの民間人が殺された。ウクライナの路上に残された遺体はおそらくロシア人の仕業と見て99%間違いないと思うが、それでもまだ確たる証拠がある訳ではない。ベトナム戦争ではアメリカ兵がすぐ横にいるベトナム人男性の頭部を銃で打ち抜く動画が出回った。戦争犯罪の動かぬ証拠があった訳だが、あのアメリカ兵は戦争犯罪で然るべき裁きを受けたのだろうか。

アメリカが始めたベトナム戦争をパリの秘密交渉を通じて終わらせたとしてキッシンジャーはノーベル平和賞を貰った。同時受賞を打診されたレ・ドクトはマッチポンプの平和賞はおかしいと受賞を辞退した。まるでロシアが始めた戦争をプーチン大統領がゼレンスキー大統領との直接交渉で終わらせた事に対して、プーチン大統領がノーベル平和賞を受け、ゼレンスキー大統領が辞退したかのような構図ではないか。

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