鎌倉時代の事をもっと知りたくて手の取った本の中で印象に残っている一つが「北条氏の時代」本郷和人著だ。大河ドラマの方は恐らく北条義時が他界すれば終わるのだろうが、その跡を継いだ泰時も中々の人物だったようだ。その泰時が明恵上人と出会うのは承久の乱がきっかけだが、果たして大河ドラマでその出会いも描かれるのかどうか。
今回敢えてこの本を紹介しようと思ったのは、昨今話題になっている宗教と寄進について興味深い話が沢山載っていたからである。
明恵に帰依する泰時が高山寺に荘園を寄付しようと申し出るが、明恵は「私たちの縁は財や金銭とは無縁です」と断る。短歌でその気持ちを伝えた明恵に泰時も「そう言わずに受け取って下さい」と短歌で返し、最後に明恵が「紙を継ぐ続飯もなにかほしからむ きよき心は空にこそ住め」と返すやり取りが紹介されている。
他にも似たような話が沢山あり、泰時の弟である極楽寺重時が子供たちに残した家訓である極楽寺殿御消息の第62条には「堂塔を建て、親や祖父の仏事をする時に、ほんの少しでも他人から金品を徴収してはならない。仏事の事で間違った事があっては、神仏が喜ばれないのは理の当然である。」とあるとか。内大臣の徳大寺実基は後嵯峨上皇に「神は人の信と徳は受け取って下さいますが、真心のこもっていない供え物は受け取りません」と献策したとか。旧統一教会に聞かせたい話が満載だ。
また地頭の上原敦広と僧の信瑞の問答を集めた広疑瑞決集(広の疑問に瑞が決す)にも民から搾り取った年貢で寺や仏像を作る是非についての問いに「どんな供物も民を苦しめた結果なら仏は喜ばない。まず民をいたわりなさい。それが仏への帰依になる」と書かれているらしい。
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