今年は何と言ってもウクライナ戦争の年として後世に記録されるに違いない。今年出会った一番の本も映画もそれに関連したものだった。
友人と呉の大和ミュージアムへ行く機会があり、その縁で読んだ「戦艦大和の最期」。文語調の語りが当時の青年将校の心意気を良く表していたが、読み進めるうち当時の軍上層部に対する怒りが沸々と湧いてきた。彼らは一体本気で勝つ気があったのか。前線で戦う兵士からの武器や兵器の改良に関する提案に耳を貸すどころか、武器兵器への不満を漏らすのは精神がたるんでいる証拠だと怒鳴って、一層厳しい訓練を要求する。その訓練も「想えば無用にして甘き訓練の反復なりき」と著者は述懐する。遠くにある静止した風船を撃つ訓練では飛び回る飛行機を撃ち落とす役には立たなかったからだ。そんな人達に国の命運を託していたとは。
映画は「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」、1930年代の旧ソ連を描いた映画だ。大恐慌に苦しむ西側諸国を尻目にソ連だけが経済的繁栄を享受しているとの報に疑問を抱いたイギリスのジャーナリストがウクライナに潜入する。そこで目にしたのは飢えに苦しみ、馬糞を食べ、死んだばかりの兄弟の肉を食う民衆の姿だった。スターリンは外貨獲得のため、ウクライナの穀物を強制的に徴収し輸出に回していたのだ。プーチンのウクライナ侵攻がハンガリー動乱やプラハの春のように行かなかったのは時代背景の違いもあろうが、その時の記憶がまだウクライナの人々の心に残っているからではないか。
国家とは人々の幸せに資する事だけにその存在意義があるのであって、国家が人々の不幸の元凶になるような事は絶対にあってはならないと強く思う。
年明けは十日からお目にかかります。皆様良い年をお迎え下さい。
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