2023年4月25日火曜日

真贋

 AIが発達する事による弊害で一番大きいのはウソのニュースが簡単に作れてしまう事ではないだろうか。先日もトランプ前大統領が警察に強制連行され必死に抵抗する様子の写真や、ローマ法王が高級なダウンのコートに身を包んだ写真がSNS上に公開され、それを真実と思い込んだ人達が沢山のコメントを寄せたそうだ。トランプ前大統領の顔は「何をしやがる」とでも言うようなもので、よくまあこんな写真を探して来たものだと思う。テレビニュースで「これはフェイクです」と言ってくれたから偽物だと分かったが、それがなかったら真贋を見分けるのは難しかったろう。その内テレビが言っていることすら信じられなくなったら、一体何を根拠に真贋を見分ければ良いのか。

ウクライナ戦争が始まって数か月後、ゼレンスキー大統領がギターを抱えて「レット・イット・ビー」を唄う動画がLINEで送られてきた。そのLINEグループのメンバーは本物と信じ「頑張れ」などの応援メッセージが書かれていたが、その唄がプロ顔負けにうまい事、歌い終わった後のメッセージが流ちょうなアメリカ英語で全くロシア語訛りがなかった事などからフェイク映像に違いないと私は思った。

かつてSTAP細胞なるものが出てきた時もホンマかいなと思った。ちょっと刺激を与えただけで細胞が若返るなんて神様への冒涜ではないかとさえ思った。敵国が撃ったミサイルを迎撃可能だというのも眉につばしたものだが、案の定先日Jアラートが発出された時は迎撃どころかミサイルそのものを見失う始末だった。

AI時代に一番大切なのは真贋を見分ける直観とセンスを磨く事であり、真贋の判断が難しい時は、両方の可能性を前提にどちらであっても対応できる柔軟性を身に着ける事なのだと思う。

2023年4月18日火曜日

AI

 チャットGPTというソフトが話題になっている。西村経済産業大臣は国会答弁作成への応用を考えているとか。国会答弁の作成って機械で置き換えられるような性質のものだったのかと驚いた次第。ついでに答弁そのものもAIによる自動音声に切り替えたらどうだろうか。そうしたら多くの政治家が要らなくなって世界に平和が訪れそうだ。

AIの進歩は目覚ましいものがある。何年前だったか、囲碁や将棋で人間がAIに勝てなくなった時には本当に衝撃を受けた。AIとは違うが、グーグルが出た時も衝撃だった。コンピュータがデータの検索に強みを発揮するのは分かっていたが、それでも私がコンピュータに慣れ親しんだ時代には自分のパソコンの中のハードディスクにあるデータを検索する程度しか考えられなかった。それが世界中のネットワークの中からあっと言う間に適切な情報を探し出して来るのだから、その速さと的確さは異次元のものに思えた。

テクノロジーの進歩は人間の生活のあり様を変えて来た。重機が発明されて人間は重い物を持ち上げる必要がなくなったし、電卓が発明されて人間は面倒な計算から解放された。今度のチャットGPTはどのように人間社会を変えるのか。いろんな予想があるが、高年収のホワイトカラー職(特にプログラマーやライター業)への影響が大きいとされる。

冒頭に述べた政治家はどうだろう。政治家が必要とされるのは、人間に欲得と多様性があって、様々な価値観や利害関係の調整が必要だからだろう。過去の多くのデータから多数の関係者の適切な妥協点をAIが見出して、それを皆が受け入れるようになったら政治家は要らなくなる。政治家がいなくなればおそらく戦争はなくなるに違いない。過去の戦争の多くは政治家の勝手で起きているのだから。

2023年4月11日火曜日

世論操作

アメリカのトランプ前大統領が起訴されていろんな事を思った。

第一に彼の国と我が国の司法制度に対する国民の意識の違い。我が国で政治家が何らかの犯罪の疑いで起訴されれば、その人に対する国民の信頼は一気に失われ下手をすれば政治家生命を失いかねない状況になるだろう。田中角栄、藤波孝生、小沢一郎など枚挙に暇がない。ところがどうだ、彼の国では起訴されたトランプ大統領の人気は却って高まっていると言うではないか。我が国の司法制度が国民から信頼されている証と考えれば素晴らしい事のようにも思えるが、一方で袴田事件を初めとする様々な冤罪も存在する事を思うと、手放しで喜んでもいられないような気がする。特に陸山会事件など、当コラム第168回でも取り上げたように、非常に不自然な検察審査会までやって、どうしても起訴するというシナリオが書かれていたようだ。検察を信頼できない国は嫌だが、検察が簡単に世論操作できる国も嫌だ。

もう一つ思ったのは、トランプ氏の不倫相手の肩書だ。「元ポルノ女優」だと言う。とても失礼な肩書だと思う。名誉棄損で訴えられたらどうするのだろう。まず「ポルノ女優」という点。確かに彼女が出演した映画が主にポルノ映画だったのかも知れない。しかし彼女自身は自分を女優であると自認し、たまたま作品に恵まれなかっただけかも知れない。あえてその点を強調する必要はないではないか。また「元」というのも気になる。彼女はもう女優の道を諦めたのだろうか。まだまだ機会があれば女優として活躍したいと思っているなら「元」は余計だ。この肩書はトランプ氏の品性の悪さを強調しようとするわざとらしさを感じる。私自身トランプ氏はどちらかと言えば嫌いだが、世論操作には負けたくない。

2023年4月4日火曜日

マスク

 二週間程前、中国の習近平主席がモスクワを訪れ、プーチン大統領と長い会談を行った。その成果を二人で発表するニュースを見て笑ってしまった。正面の立派な机に二人が並んで座り、それに向き合う形で右側にはメドベージェフ、ラブロフをはじめとするロシア政府の重鎮が、左側には王毅、秦剛など中国政府の重鎮が、先生の話を聞く生徒よろしく神妙な顔つきで座っている。その中露政府関係者の様子がちょっと変なのだ。というのはロシア側は誰もマスクをしていないのに、中国側は全員がマスクを着用している。これは一体どうした事だろう。

厳しいゼロコロナ政策を取っていた中国も最近はついに音をあげウィズコロナに舵を切った筈だ。自分らが保菌者かも知れないのでうつしたら悪いと思ってマスクしたのか、それともロシアでは菌が蔓延していると思っての事か。一方のロシアは国内の総べての資源をウクライナに投入するためマスクを調達する暇もなかったのか。ともかく全員が同じ行動を取ったのはトップからの強い指示があったからと見るのが自然だ。強権国家の面目躍如と言ったところか。

両国とも欧米の価値観に反発し、欧米型の民主主義だけが民主主義ではないと息巻いているが、民主主義を標榜するなら少しは個人の自由に配慮しているフリでもしたらどうだろう。自由が尊重されている社会ならマスクの着用についても多様な考えがあり、着けている人着けないがバラバラになって然るべきだ。10時間以上にも及ぶ長い会談では自国を民主国家とカモフラージュするためマスク着用者を乱数的に配置するなんて議案はなかったのかな。

かと思うと極東の某自称民主国家では政府からの指示がないとマスクを着けるかどうか判断できなくて困る、なんて言ってる国もあるしなあ。