2023年12月5日火曜日

何もない

 7日間の戦闘休止が終わりまた憎悪と破壊が始まった。


空爆によってコンクリートが瓦礫と化し辺りに粉塵をまき散らす。その粉で髪を真っ白にした少女が大人に抱きかかえられながら泣き叫ぶ。中には粉塵で真っ白になった顔から血を流している幼児もいる。年端も行かない子供ならこの記憶はいつしか消えるのかも知れないが、小学校の高学年にもなれば敵国への憎悪が心に深く刻み込まれるであろう事は想像に難くない。そして彼等が成人になった時、その憎悪がどういう形で行動に現れるのか。ネタニヤフ首相はハマスの殲滅が目標だと言っているが、実際にやっているのは第二のハマス、第三のハマスを育てる事ではないかと思えてならない。

辺り一面瓦礫となった街中を背に、記者が「ここには水も電気もインターネットもありません」という。本当にそれが問題か。水を水道と読み替えれば、その三つは人類にとって百年前はどれもなかったものなのに。

私が物心ついた頃、流石に水道はあったが電気と言えば電燈の事だった。照明以外の電気設備と言えばラジオだけで、しかもその電源は天井からぶら下がった電燈のソケットから取っていた。壁に数か所のコンセントが出来て、何でも電気の力を借りなければ生活できなくなったのはつい最近の事だ。水道についても、母が生前言っていた事だが、人生で一番嬉しかったのは家に水道が付いて、毎朝井戸から水を汲んで台所の水瓶を一杯にする仕事から解放された事だと。それからまだ百年にもならない。

その後現地の人が泣き叫ぶように訴える様子が報道された。「家もない、シェルターも服もない。食べる物も水も何もないんだ」それこそ実際に苦しむ人の声だった。外からやってきて、自分の仕事の不便さに関心が行っている記者の甘さを感じてしまう。

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