2024年2月27日火曜日

一つになる

 「心を一つに」とか「ワン・チームで頑張ろう」とか、組織が一つになる事を推奨する言葉をよく耳にする。スポーツの対戦など限られた場面でなら兎も角、無暗に一つになる事を私はあまり好きではない。逆に、ナチスの党大会や北朝鮮のマスゲームなど一糸乱れぬ様子を見ると、嫌悪感が湧いてくる。どんな組織でも様々な意見や価値観が混在し、多様性がある事の方が健全だと思うからだ。

ロシアのプーチン大統領は今こそ国民が一つになる時だと思っているのだろう。そのためには自分に異を唱える人の命を奪う事すら厭わない。彼のやる事を見ていると、戦争を戦い抜くために国民が一つにならねばならないのではなく、国民を一つにするために、つまり自分の意見に従わせるために戦争をしているのではないかとさえ思えて来る。かつてチェチェン紛争の真相を究明しようとした女性ジャーナリストが射殺された事件など、まさに当時まだ無名のプーチン氏が売名のために紛争を起こしたような構図だった。

権力を持つ者が「心を一つに」と言い出したら注意した方が良い。「国体の本義を明徴にし人心の帰趨を一にするは刻下最大の要務なり。政府は崇高無比なる我が国体と相容れざる言説に対し直に断乎たる措置を取るべし」ナワリヌイ氏を断乎排除したロシアの言い分のようだが、実はこれは日本の衆議院での決議案の一文だ。今から約百年前の昭和十年、天皇機関説を糾弾するための決議案が満場一致で可決された。満場一致、まさに一つになったのだ。

組織が一つになるとは要するに団結して外の敵に対するという事だ。組織内での異なる意見を封殺し、寛容さを失っていく。寛容さを失った組織程怖いものはない。アメリカ大統領選挙で、トランプ氏の主張や支持者たちの不寛容さが気になって仕方ない。

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