2025年4月29日火曜日

新旧メディア

 先々週の当欄で、トランプ大統領がインサイダー取引をするのではないかとの危惧を書いたが、早速424日号の週刊文春でそれが取り上げられた。池上彰氏のコラム記事によると、トランプ大統領は相互関税の一時停止を発表する直前に、「今が買い時だ」と自身のSNSに投稿したというのだ。池上氏は、それによってトランプ氏が関係する投資ファンドが利益を上げた可能性をほのめかしているが、そんな露骨な事が本当に行われたのだろうか。

以前なら、活字になった事はまず間違いなく本当だろうと信じて疑わなかったが、昨今ではメディアの信頼性が揺らいでいる。特にアメリカでは伝統的メディア(新聞・テレビ等)と新興メディア(ブログ・SNS等)がお互いを批難し、自己の正当性を主張し合っている。新興メディアが言うには「伝統的メディアは今まで国民にウソをついてきた。彼等は自分等が政治的に中立だというフリをしたがる。我々新興メディアは自分等の政治的意見を隠していない。」成程と思うし、実際アメリカ国内で伝統メディアを信頼しているという人は31%にまで低下しているらしい。接戦が予想された先の大統領選挙でトランプ氏が圧勝したのも、そうした事が背景にあるようだ。

私の眼には伝統的メディアが既得権益の上に胡坐をかいているように見える。日本のテレビ界は特にそうで、フジテレビの不祥事も既得権益が原因に見える。暴言かも知れないが、フジテレビは一度倒産してその電波枠を別の会社に譲るべきではないか。より良心的で真摯な番組を作るべく、複数の会社が電波枠を巡って競争する枠組みが欲しい。サッカーJリーグのように毎年入れ替えが行われるとテレビももう少しまともになりそうな気がする。

(次週はお休みを頂き、13日から再開します。)

2025年4月22日火曜日

並ぶ

基本的に並ぶ事が大嫌いで、時々ラーメン店の外に並んで順番を待っている人の列を見ると呆れてしまう。寒い冬に平気で客を店の外に並ばせる店主の気持ちも理解できない。

先日開幕した大阪万博は「並ばない万博」を目指しているとかで、それは実に見上げたチャレンジだと思うのだが、現実はそんなに簡単にコントロールできるものではないようだ。ニュースを見ると、昼食時のある店舗では「292分待ち」のサインが出ていた。292分と聞いてすぐにピンと来る人がいるだろうか。とてつもなく長い時間である事は分かるが、それを60で割って4余り52と計算しないと具体的なイメージがつかない。お昼を食べるために並ぶ事があっても普通なら長くても4050分程度で、1時間を超えるような事はなかろうと、時間表示する事を忘れたのだろう。

それにしても待ち時間を表示するのに有効数字3桁が必要なものか。並んでいる人の数とか、列の長さなどから単純に算出した数字を表示しているものと思うが、まさか4時間52分後に来ればピッタリ席が空いているという事もあるまい。ならば「4.55時間待ち」とでも表現した方がずっと自然だ。

兎に角、そんなに人が並ぶという事は屹度サービスを提供する側の能力が足らないからに違いない。よそへ行こうにもどこも混雑しているから仕方なく並んでいる人が殆どだろう。並ばない万博を目指した事務局は来場者がみんな弁当を持参するとでも思っていたのだろうか。あまりにも稚拙な計画ミスと言わざるを得ない。

そう言えば高速道路でもETCの不具合から、料金を払うためだけに延々と並ばされた人達がいた。素早い移動という果実の対価として支払う料金が、そのために却って遅くなるという馬鹿みたいな事態に大人しく従う人達も不思議だった。

2025年4月15日火曜日

独裁

 「独裁」とは文字通り「独り」で「裁決」する事で、今まさにトランプ大統領はそれをやっている。関税の率を決めたり、その発効時期を遅らせたり、しなかったり。そうした事が政府の高官すら相談なしに裁決され、事後追認せざるを得ないような状況だ。

まさに独裁者と呼ぶに相応しい振る舞いだが、世界のメディアはそれを一切非難しないどころか、その対応に右往左往している様は彼の振る舞いを是としているかのようだ。もし同じ事を中国の習近平主席が行ったら、さぞかし「この独裁者め」という非難の大合唱が起きていただろう。今回それが起きないのが不思議でならない。

金儲けに人一倍関心の強いトランプ氏の事だ、自分の口先一つで株価が大きく上下する様を見て、誰か縁者を通してインサイダー取引をやりかねない。関税を高く設定する発表をする前に空売りを仕掛け、発表後に買戻し、またその関税の発動時期を遅らせる発表の前に買い込んで、発表後に売り抜けたりすれば瞬く間に一財産も二財産も出来てしまう。もしそんな事をしてそれがばれたりしたら、いくら何でもその時は弾劾されるであろう。ウォーターゲート事件以上の破廉恥さなのだから。しかし昨今の様子を見ていると、それでもなおトランプ大統領は続投するのではないかと疑いたくなる程の独裁体制である。

それにしても世界で傑出した軍事力を持つ米中露の3か国がいずれも独裁者によって支配されているのは由々しき事態だと思う。独裁体制には大胆な対策がとれて、しかもそれを素早く行動に移せるなどの長所があるが、それが危険を顧みない事につながる。合議制・分権制は逆に意思決定は遅くとも過激さを回避でき、より常識的な行動につながる。

軍事大国の独裁制は人類滅亡近しを暗示してはいないか。

2025年4月8日火曜日

相互関税

 「相互関税」という言葉は2025年の流行語として記憶されるのではないだろうか、などと言ったら不謹慎だろうか。ここ数日どのチャンネルを回しても「相互関税」という言葉が連呼されている。それにしてもこの件、不思議な事が多い。

まず第一にトランプ大統領が掲げた税率の一覧を示したパネルに並んだ国の順番。一番上が中国で以下EU、ベトナム、台湾、日本、韓国、タイ、スイス、と並んでいる。アジアから順に西回りに並べた訳でもなさそうだし、関税率の高い順でもなさそうだ。ベトナムが日本より上にきているところをみると貿易額の大きい順でもなさそうだし、もちろんアルファベット順でもない。税率の算定方法についてもそうだが、この並び順もトランプ政権の非論理性を象徴しているように思える。

某新聞記事を見ると、この関税措置によって2027年の世界全体のGDP0.6%下がるとの予測(アジア経済研究所の分析)があるそうだが、たった0.6%で済むのだろうか、というのも不思議だった。アメリカを除くそれ以外の国同士、互いに関税を下げて、アメリカを横目に互いの貿易を活発化し、経済を発展させるなんて要素を加味していたりするのだろうか。もし本当にそうやって、アメリカ一人がスタグフレーションに苦しむなか、他の国が一斉に自由貿易の果実を満喫して繁栄して行ったら喝采ものだが。

一番不思議なのは、この政策はトランプ大統領のコアの支持者であるアメリカ国内の低所得白人労働者の利益を願って採用されたものだと思うが、本当に彼等のためになるのか、という点である。GAFAや金融業などで高給を食んでいる人達はそんなに影響は受けないだろうが、一次産業二次産業の人達は却って苦しむ事になるように思えてならない。

2025年4月1日火曜日

政治とカネ

 石破総理による金券配布問題は「政治とカネ」の問題というより「公私の区別」の問題のような気がする。総理総裁といえども私的生活の領域はあるだろうから、その部分で誰かをねぎらうべく私費でもてなしたとしてどこに問題があろうか。いや、自民党の党務に関する事だからと、原資が税金から出された政党交付金であったとしても、一旦党の自由になるカネになったものを党がどう使おうと文句を言えた筋合いではない。

しかし、巷間囁かれるように官房機密費が使われたとなるとこれは大問題だ。そんな事はないと信じたいが、もしそうだとしたら公費を私的に使った事になるから公金横領という刑事罰の対象となるべきものだ。「政治とカネ」どころの騒ぎじゃない。

かつて総理のお友達のために、国有財産が不当に安く払い下げられようとした事件があったが、これも公文書偽造などではなく、本来正しく管理すべく任された仕事を裏切った訳だから刑法第247条背任罪として問われるべきだった。

「政治とカネ」とは政治がカネによって曲げられ正しさを失う事が問題なのだ。選挙の際の買収とか、政策遂行時の贈収賄などが卑近な例だ。しかし最近周りを見渡すと、政治を曲げるのはカネより情報の方が大きいような気がする。フェイクニュースによって世論が操作される例がとても多いように思える。しかもこの場合、事態がより深刻なのは操作されている側に後ろめたさが全くない事だ。カネで買収された時にはいくらかは後ろめたさが残るだろうがフェイクニュースで踊らされても自分の正義を疑わないケースが殆どだろう。

ニュースのネタがどこにあるのか、常に注意しなければならない。これからは「政治とカネ」以上に「政治とネタ」の方がずっと重要になりそうな気がする。