抽選とは本来「抽籤」と書いて文字通り「籤を抽く」事を意味する。(「抽」は穴から手でひきぬく事を意味する字)だが「籤」が当用漢字に採用されなかったため、音が同じ「選」を代用した当て字を作った。その事情をNHKの松江放送局は御存知ないのだろうか。
二月二十一日松江市総合体育館で「松岡修造のテニスパーク」が催された。中には「修造にチャレンジ」の企画があって、当日正午までに申し込めば20名が「抽選」で選ばれて松岡修造と一球打ち合えるのだと言う。前日のテレビでそれを知った私は妹と約束していた昼食会をキャンセルして松江に向かった。申し込み用紙に住所、氏名、年齢、性別を書いて半券を貰う。当選発表を見て驚いた。
人選結果を見ると明らかに主催者側の意図が垣間見える。小学生が半分、残りは中高生と四十代までの成人が半分づつ。もし無作為に抽選していたらこんなに綺麗な構成になるはずがない。
確かに主催者としたら出た人に怪我でもされたら困るから六十過ぎの老人を選びたくないのは分かる。人選にあたって抽選が最適な方法でない事も分かる。新入社員を選ぶのに抽選する会社はないだろう。応募者の属性を詳しく吟味し自分の思いに適った人を選ぶはずだ。そうした手続きは「選考」と言う。これも本来は「銓衡」と書くべきだが当用漢字にないための当て字である。「銓」は分銅、「衡」は量り竿を意味し、あれこれ比べて最適のものを選ぶ事を表す。NHKは応募要項にはこの言葉を使うべきだった。
抽選というからには応募用紙を全部箱の中に入れて、衆目の集まるなかで無作為に当たり籤を抽いて欲しかった。年齢を基準にした選考が行われるのが分かっていれば、約束をドタキャンして妹に借りを作る必要はなかったのに。
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