木曜未明の事、ベッドから立ち上がろうとして腰に激痛が走った。背筋が痙攣したように痛む。スポーツの最中に脚がつった時の痛みに似ている。とにかく立ち上がることが出来ない。幸い横になっている分には腰に多少の違和感はあるものの痛みは激しくないので、朝になるのを待って枕元の携帯でその日の予定のキャンセルとお詫びを入れ、さてどうやって病院へ行ったものか思案した。ともかく一階まで這って降りて救急車を呼ぶしかないか。だけどパジャマ姿で運び出されるのは嫌だし。かといって着替えは到底出来ない。その時頭をかすめたのが往診という言葉だった。
こんな時往診してくれるお医者さんがいたらどんなに嬉しい事だろう。そもそも病院へ行く、というのは病院へ行くだけの体力のある人にしか出来ない事だ。体力の弱った患者が家にじっとしていて、元気なお医者さんが移動して見て回る往診制度は実に理に適ったものではないか。事実私が幼少の頃おばあさんが普段は使わない客間用の南の座敷に寝かされて往診を受けていたのを思い出す。あの頃は患者の数に比べてお医者さんの数が余っていたとでも言うのだろうか?
経済合理性から考えれば、治療という価値の高い機能を効率良く稼動させるため医師がじっとしていて患者がくるくる回転した方が良いに決まっている。体力がなくて通院できない人には入院という制度が用意されている、というのが現代の医療システムの基本か。
救急車は脳や心臓の疾患で一刻を争う人のためにあって、服装を気にする余裕のある人が利用するものではないとは思うが、それにしても救急車に医師が同乗し、往診的な応急処置を施してくれたらどんなにいいだろう。翌日痛みがいくらか治まり、必要性が減った治療を受けに通院した私はそう思った。
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