韓国からは連日のように大規模デモの様子が報じられている。何万もの群衆が集まったその状況から判断すると、場所はおそらく景福宮から市庁へつながる世宗路の光化門広場。だとすると群衆を見下ろす大きな立像は李舜臣のものだと思われる。
李舜臣は秀吉による文禄・慶長の役(朝鮮では壬辰倭乱・丁酉再乱)の際に大活躍した武人である。海軍を率いて敵を破り、国を救ったという意味では日本の東郷平八郎にも匹敵する人だと言っていい。だがこの人、壬辰倭乱の際にあげた功績にも拘わらず、丁酉再乱では白衣を着て軍を指揮する羽目になった。白衣は朝鮮では罪人の着るもの。最近では全斗煥・盧泰愚両元大統領が白衣を着て神妙な姿で写っている写真をご覧になった方もいるだろう。ウィキペディアによると李舜臣は壬辰倭乱の後、かつて上司であったが李舜臣の部下になったことを恨んだ元均らの讒言により更迭され一旦は死罪の宣告を受けたらしい。
救国の英雄ですらこの有り様だ。大統領が退任後いつも罪に問われるのも不思議ではないのかも知れない。「投獄しろ」「牢屋につなげ」といった激しい言葉も、北朝鮮がアメリカ帝国主義を批難する時に発する過激な言葉に似て、何か物悲しい気持ちになる。いやしくも一国の大統領である、いくらかの遠慮や敬意はないのだろうか。
韓国の初代大統領は李承晩だった。日本支配下において地下で抗日独立運動を指導した呂運亨や金九が本来選ばれるべきだったが、アメリカの強い意向でキリスト教徒である李承晩が選ばれたとか。李承晩は四捨五入改憲などで大統領権限の拡大に走る。
大統領の親族や友人による権力濫用が大統領権限の強大さに起因しているとすると、これもまた皮肉な運命と言わざるを得ない。
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