「すかんぽ」という植物をご存知だろうか。俳句歳時記を開くと春の季語として酸模(すいば)の名で載っており、また別名を「イタドリ、イタンポ、ドングイ、スッポン、ゴンパチ、エッタン」などとも言うそうだからそちらの名前でご存知の方もいるかも知れない。
タデ科の多年草で春に川の土手に新芽を出すそうだ。生でも食べられ酸味があるというが、春、酸味、川の土手、いかにも田舎の風景に似合う風情が作者に悲恋を想像させたのだろう。「すかんぽの唄」(星野哲郎作詞 米山正夫作曲)という唄がある。
ちぎるとスポンと音がして
青い匂いが手に残る
すかんぽ摘めばおもいで帰る
胸の痛みに気がついた
あれは俺らのあれは俺らの十九の春さ
もっと幼く純真なものでは北原白秋作詞・ 山田耕筰作曲の「すかんぽの咲く頃」がある。
土手のすかんぽ ジャワ更紗
昼は蛍がねんねする
僕ら小学尋常科 今朝も通ってまたもどる
すかんぽ すかんぽ 川のふち
夏が来た来た ドレミファソ
唐突にジャワ更紗が出てくるが、白秋の頭の中では土手に並んだすかんぽがジャワ更紗の縞模様を思い出させたのだろう。そのジャワ更紗の展示が今出雲文化伝承館で行われている。深みのある茶色をベースにしたデザインは、高貴さや昔懐かしさを感じさせる。懐かしさも白秋がすかんぽとジャワ更紗を連想したポイントの一つだったか。
開催は夏も間近な五月十四日まで。期間中様々なイベントも計画されている。土手ですかんぽを摘んで、ジャワ更紗を鑑賞し、白秋の追体験をしてみては如何だろうか。
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