十膳山という山をご存知だろうか。松江市と旧平田市の境にあり、その山頂から宍道湖を望む眺めは絶品だ。今なら山頂まで車で行く事が出来る。この山の素晴らしさは山頂からの景色もさることながら、その山頂までの道が一人の民間人によって拓かれた事である。
多久和幸男さん、伊那地区のコミセンを通じてお話を伺いたいと申し入れると、山頂で会いましょうと返事を頂いた。山頂は平らに整地され、十数人が歓談できるようなビニールハウスが設置されている。元々この辺りの畑を耕しに獣道を登っていたが、山頂の木を切ればさぞ眺めが良いことだろうと思いついたとの事。平成二十年から使い慣れた油圧ショベルを使って道を整備し始めた。木を切っては道を作り、油圧ショベルで山頂に到着した時の感動は忘れられないと仰っていた。一応の道は出来たものの、当初は乗用車での行き来は出来ず、トラクターで山頂への行き来をしていたとの事。少しづつ道幅を広げ、砂利を敷き固め、軽トラックでの物資の輸送が出来るようにした。
それにしてもこのような事を思いつき、しかもそれを実行し完成するとは、なんと素晴らしい精神力と実行力だろう。小学校で習った十和田湖でのヒメマスの養殖を成功させた和井内貞行を思い出した。着手当初は白い眼で見ていた人も、ゴールが見え始めると次第に賛同者に変わっていったであろう事が想像される。
宍道湖北部広域農道を平田から松江に向かって走り、一畑薬師への道を過ぎてしばらくすると左側に「十膳山」と書かれた小さな標識が見える。それを左折し道なりに「十膳山→」と書かれた指示に従って登れば山頂にたどり着く。山頂のビニールハウスに置かれた緑色のファイルに是非感想を記入されたい。それを読むのが多久和さんのこの上ない喜びだそうだ。
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