消費税10%を延期する可能性に言及して政治家が国民の反応を見る観測気球を上げたり、何としても10%にしたい官僚側はGDPの年間成長率が2.1%にもなるという統計を出したり。政府の発表する統計は何らかの意図が裏にあると見た方が良さそうだし。そんな中「脱税の世界史」という面白い本を図書館で見つけた。奥付を見ると2019年5月2日第一刷発行とあるからできたてのほやほやだ。
著者は元国税庁調査官だそうで、税の歴史にも詳しそうだ。「民が疲弊しないように効率的に徴税し、それをまた効率的に国家建設に生かす」事が国が隆盛するための絶対条件で、世界史に登場する強国、大国というのはどこも優れた税制を持っていた、という意見には納得する。古代エジプトから始まってGAFAの逃税スキームまでを題材に一貫した著者の主張は富裕層からちゃんと税金を取れ、という事になろうか。
国家が隆盛するときというのは富裕層がちゃんと税金を払っている時であり、国が長く続くと必ずといっていいほど富裕層がいろんな手を使って税を逃れるようになる。すると国は貧しい者から多くの税を徴収するようになり、国が乱れ崩壊していく、と著者は言う。そして日本の現状を憂える。日本では昨今高額所得者や大企業からまともに税金が取れなくなりつつあり、大企業、富裕層の税金は大幅に下げられている。その一方で庶民に負担の大きい消費税が導入され税率がどんどん上げられている。消費税の逆累進性は昔から指摘されている事だ。それが増えるのは国が危うくなる前兆だというのだ。
ただ気になるのは著者が「オスマン・トルコ」という言葉を使っている事。この言葉を使う人は中東史に素養がない人だそうだ。その事についてはまた別の機会に。
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