2020年9月15日火曜日

線審

 全米オープンテニス大会、優勝候補筆頭のジョコビッチ選手が失格処分となってしまった。ゲームの変わり目に不用意に後ろに打ったボールが運悪く線審の喉元を直撃してしまったからだ。線審が気づいていれば十分避けられたし、当たった場所が胸や腹なら何て事もない球だった。しかし「故意か過失かにかかわらず、コート内で危険なボールを打つ行為」がルール違反だとしての処分だった。

問題はあれが「危険なボール」だったかどうかだ。速度など客観的な基準が定められている訳ではないから主審の判断に委ねられるのだろう。香港で警察官に向かってクラクションを鳴らしたバスの運転手が国家安全維持法違反の咎で逮捕されたというニュースを思い出した。

そもそもテニスの線審とはどういう人達なのか。主審は異なる大会で何度も同じ人を見ているから恐らく職業として成立していると思うが、線審で同じ人を見る事は殆どないからその時々のボランティアのような形で運営されているのではないか。しかしどんなバックグラウンドを持った人達なのだろうかと疑問に思うのは、およそ運動とは無縁と思われるような体型をした人が沢山いるからだ。視力が良くて、テニスはプレーするより見るのが好き、という人達を想像する。何よりテニスを深く愛する人達だと信じたい。

ならばあの被害を受けた線審には「私は大丈夫。大した事はないからどうか事を荒立てないで欲しい」との申告をして欲しかった。今大会はナダルもフェデラーも欠場し、その上ジョコビッチまでもいなくなってしまったら横綱大関が全員休場してしまったようでなんとも淋しい。テニスを愛するならば、テニスファンを愛するならば、一人のちょっとした不注意で大会の価値が減じる事態を避ける努力をして欲しかった。

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