2021年9月14日火曜日

柔道とガッツポーズ

 嘉納治五郎は柔道の国際化を目指し、柔道がオリンピックの種目となる事に尽力した。彼の夢は前の東京五輪で実現し、しかも無差別級の金メダリストが外国人だった事が国際化が成就した事の象徴であるように言われた。しかし国際化は柔道の変容を伴う。

ヘーシンクの所作はまさに日本の柔道そのものだった。講道館で柔道を習った彼は技術だけでなく、柔道の精神をも学び取ったようだ。試合が始まると、いざ勝負、とでも言うように堂々と両手を上げて相対している。しかし昨今は、腰を引いて身をかがめ、相手を睨みつけるようにしてスキを伺い、両手をせわしく出したり引いたりする。この様変わりを嘉納治五郎が見たらどう思うだろうか。

勝利の後のガッツポーズも当時はなかった。ヘーシンクが取った行動は自国の関係者が喜びのあまり畳の上に入ろうとするのを制する事だった。おそらくボクシングでノックアウトの後セコンドがリング内に入るのと同じ感覚で畳に上がろうとしたのだろう。柔道をボクシングと一緒にしてはいけない。ボクシングは相手を殴り倒す事を目的としている。仮に相手がこちらに敵意を持っていなくても。しかし柔道は違う。

ユーチューブで講道館柔道に関する情報を検索したら講道館柔道十段、三船久蔵の「球の原理」というのが見つかった。球は絶対に倒れない、球の極意を体得する事により襲ってくる敵から身を護るのが柔道だというのだ。柔道は敵意のない相手をやっつける事は考えていない。だからお互いに敵意がないと「指導」などと言うペナルティが必要になってくる。

柔道は国際化してジュードーになった。阿部詩選手のガッツポーズに違和感がなくなったのも国際化の結果の一つだろう。お兄ちゃんは畳の上ではガッツポーズをしなかったが。

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