2022年6月21日火曜日

手書:トライアングル第772回

 今この原稿はパソコンのワープロソフトで書いている。文章を書く際にワープロを使うようになったのは約40年前の頃、ワープロ専用機が個人でも手の届く値段になり、10万円程度で購入した機械でブラインドタッチの練習をした事を思い出す。

ワープロを使いたいと思ったのは、考えている事を文字にするのにその方がずっと早いからだ。それに文章を組み立てるにしても、まずは言いたい事を思いつくまま箇条書きにして、それらの順番を前後させたり、接続詞を交えたり、コピー&ペーストで推敲できる。こんな芸当が出来るのもワープロならではだ。以後ちょっとしたメモや走り書きをする時以外にはペンや鉛筆を使わなくなった。

ところで標題の文字をどう読まれただろうか。「テガキ」と読んだ方が多いと思うが、実はその言葉は昭和44年(1969年)発行の広辞苑第三版には載っていない。それもそのはず、ワープロが一般化するまでは文章を綴るのは手で書くのが当り前だったのだから。広辞苑に載っている「手書」は「テカキ」と読んで、「巧みに字を書く人」と説明がある。

手元にある辞書を調べてみたら1982年発行の新明解国語辞典には「テカキ」と共に「テガキ」が現れ、2008年発行の三省堂国語辞典では「テガキ」のみで「テカキ」は消えていた。

「テガキ」なる言葉がいつ現れたのか日本国語大辞典で調べると、1970年の曽野綾子「傷ついた葦」と同じく1970年の倉橋由美子「夢の浮橋」の二つの用例が載っていた。一方の「テカキ」は720年の日本書紀に既に現れているというのだから、こちらは随分と由緒正しい。

今ワープロで「テカキ」と入力したら「手書きあれども文書きなし」の慣用句が変換候補の一番上に出た。ワープロを使った文書き目指して精進しようと思う。

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