2022年11月15日火曜日

3億円の箱:トライアングル第792回

 鳥取県が倉吉市に建設を予定している県立美術館の目玉として購入したアンディ・ウォホールの作品が「3億円の箱」として話題になっている。ポップ・アートの傑作かどうか知らないが、見た目には何の変哲もないただの箱に見える。それを1個約六千万円で5個買おうというのだから異論が出るのも頷ける。反対するのはウォホールを知らないからだという意見があったが、ウォホールの名の前に無批判盲目的にひれ伏すというのも美術鑑賞の姿勢として如何なものか。しかもウォホールが作ったのはその内の一つだけだと言うではないか。

元々、美術品を買うという行為はある種の道楽で、苦労の末成功し財を成した人がやる事だと思っている。足立美術館や根津美術館、山種美術館などが道楽として自分の責任において購入作品を決め、それが無駄使いになろうがある意味勝手だが、自治体がやる場合は注意が必要だ。美術教育の意味合いや、県民に潤いの場を提供するという目的があるにしろ、税金の無駄使いと後ろ指をさされないためには、作品の購入に当たって一定の基準を設けるべきではないだろうか。

例えば、地元出身の美術家や地元にゆかりのある人の作品を優先するとか。長谷川利行や村山槐多は絵具を買うお金にも不自由していたそうだが、そんな時彼等の出身地の美術館が作品を買い上げればもっと良い作品を残したかも知れない。松本竣介は松江にも住んだ事があって、松江市で彼の作品を鑑賞する機会があればと思うのに彼の作品の多くは岩手県立美術館にある。

平井知事は「シャガールとかルノアールとかなら県民の理解が得やすいだろうが、それは何十億、何百億になる」と仰ったとか。そんなビッグ・ネームに頼っている内は、知恵と工夫が足りないと言われても仕方ない気がする。

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