2023年7月25日火曜日

二冊の本

 男女平等を声高に叫ぶあまり、「男らしさ」とか「女らしさ」という言葉を使う事すらいけないという風潮がある。しかし、男性女性それぞれの特質を活かした美徳というものはあっても良いではないか。女性の美徳、というと山本周五郎の「小説日本婦道記」を思い出す。

そこに描かれた理想的な女性達、そのストイックな姿にはついホロリとさせられる。しかしこれはあくまで男性が描いた理想的女性像であって、女性が思い描く理想的女性像にはまた別の姿があるのだろう。それはどんなものなのか、また逆に女性の視点からの理想的男性像はどんな姿をしているだろうか、女性の作者が書いた「小説日本夫道記」はないものかと思いながら図書館の本棚を眺めていたら内館牧子著「男の不作法」という本が眼に入った。

題名からして女性から見た嫌な男が書かれているに違いない。ならばその逆を想像すれば女性から見た良き「男らしさ」が分かるに違いないと思って読み始めたが、すぐその期待は裏切られた。レストランのウェーターに威張り散らす男、相手の名刺の肩書によって態度が変わる男、等が作者の体験談として語られる。そこまで酷いと反面教師にもならない。読めば読む程不愉快になって三つ目のエピソードを読んだ辺りで放り出した。「小説日本婦道記」を読んだ時はそこはかとない幸福感があったのに、この違いは一体何だ。

作者の内館さんはこんな嫌な男達と付き合っているなんて何と不幸な事だろう。少なくとも私の周りにそんな奴はいない。もしいても自然と交友関係の中から弾き出され淘汰されるからだ。あ、そうか。内館さんは体験談を装っているが、実は想像の上で嫌な男を書いたのか。そう言えば山本周五郎が描いた女性達も作者が理想として創り出した人達なのだから。

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