2023年5月23日火曜日

闇バイト

 白昼堂々、衆目の集まる中、店の陳列棚のガラスを割って中にある高価な商品を強奪する様には言葉を失った。ニュースが即座に「闇バイトの仕業」と報じたのは、誰かに命令でもされない限りこんな事をする筈がないとの思いがあったからだろう。

少し前には強盗に入った住宅で高齢女性を殺害するという闇バイト事件があったが、人は自分のためならともかく他人に指示乃至命令されて悪事を働けるものなのだろうか。悪事というものは自分のため已むに已まれぬ事情があるとか、家族のため又は自分が所属する組織のためを考え、その悪事の悪さ加減と悪事がもたらす便益とのバランスを考えて納得できなければ踏み切れるものではないと思っていた。しかし闇バイトの若者達は他人のために、どう考えても割の合わない悪事をしでかした。

彼等の背後にあったのは恐怖だった。人が悪事に手を染める時、一番強い動機となるのは恐怖なのだろう。そこでは既に合理的な判断をする余裕がなくなっている。人に何かをさせる時、イソップ童話は北風より太陽の方が有力だと説いた。それをする事のメリットを分からせて自発的に行動する方向に動機付けした方が効果的との事だが、それは何か良い事をさせる時にしか通用しない理論で、悪事をさせるためには北風を強力に吹かせるしかないようだ。

悪事の最たるものは人殺しで、その悪事を命令して行わせるのが戦争だ。誰も人を殺したりしたくない。しかもその人殺しは何一つ自分のためにならない。そんな事を敢えてしなければならないのが戦争だ。闇バイトの究極が戦争だと言えるのではないか。最近テレビで見るロシアのショイグ国防相の顔が何か沈んでいるように見える。闇バイトから抜け出したいと言っているようにも見えるがどうだろうか。

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