天皇陛下の第一人称と言えば「朕」を思い出す。「朕惟フニ」は教育勅語をはじめとしてよく耳にするフレーズだった。戦後人間宣言を経て、天皇陛下がご自身に言及する際どんな言葉をお使いになるのか、興味をもって即位の式典を見ていた。
皇居前広場で行われた国民の祭典の最後に二重橋の上で述べられた天皇のお言葉、一人称で語るべき文章は沢山あったがそのいずれもに主語は省かれていた。「宣明しました」「感謝します」「嬉しく思いながら過ごしています」「お見舞いを申し上げます」「心から願っています」などなど。主語を敢えて明記しなくても文章が成立する日本語の特質が活かされてるが、どうしても一人称の主語を言わねばならない時にはどう仰るのだろう。中には「私たち二人で新たにしてきました」という表現があるからやはり「私」か。
「朕」という言葉が最後に使われたのは昭和二十一年の年頭の「新日本建設ニ関スル詔書」所謂人間宣言だろうか。国立公文書館でそれを読んだ時は感動した。新年を迎えるにあたり明治天皇が国是とした五か条のご誓文を再確認し、以下「朕は茲に誓いを新たにして国運を開かんと欲す。須らく此の御趣旨に則り旧来の陋習を去り、民意を暢達し、官民挙げて平和主義に徹し、教養豊かに文化を築き、以て民生の向上を図り、新日本を建設すべし。(中略)
同時に朕は我国民が時艱に蹶起し当面の困苦克服の為に又産業及文運振興の為に勇往せんことを希念す。我国民が其の公民生活に於て団結し、相倚り相扶け、寛容相許すの気風を作興するに於ては能く我至高の伝統に恥じざる真価を発揮するに至らん。」と続く。
バブル崩壊後元気のない日本だが、令和の今こそ「我至高の伝統に恥じざる真価を発揮」すべき時ではないか。
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